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《ネタバレ》 「人生の半分はトラブルで、あと半分はそれを乗り越えるためにある」。この映画の名言としてよく取り上げられる台詞である。しかし、この台詞を吐くのは主人公の二人ではなく、二人の幼馴染みである老婦人ティシャ。彼女が会話の中でサラッと言うので、名言と知られているわりに、正直、あまり印象に残らない。ティシャと共に饒舌なのは、老紳士ミスター・マラノフ。彼も人生訓のような台詞を沢山吐くが、こちらも同様にその饒舌さ故にあまり印象に残らない。
リリアン・ギッシュ。当時、御年93歳。彼女は、姉役のベティ・デイヴィス(当時、御年79歳)から常にBusy、Busyと揶揄される。生真面目で、働き者で、常に忙しく動き回っていて、教訓めいた言葉、人生を悟ったような言葉を一切吐かない。盲目で気難しい姉に寄り添い、彼女の世話をする。死んだ伴侶との46回目の結婚記念日を静かに一人祝う。隣人たちに気を遣い、彼らの話をよく聞いてあげる。姉は妹の気丈な思いを感じて言葉に出来ない感謝を抱く。サマーハウスに新しい大きな窓を付ける決断をする。そして、八月の鯨を只管に待つ。 実は、そんな彼女達の心の有り様こそ、語られない、語られ得ない、この映画の名言ならぬ非言語故の生の勁さ(つよさ)なのである。歴史に刻まれた其々の心の重み、それは一般化できない。それは言葉で紡がれる世界ではなく、彼女達自身の静謐な生の佇まいの中にこそある。カメラはそんな彼女達が連れ立ってゆっくりと歩く、その握り合う手、歩調を合わせる足元を映す。エンディングの音楽の中、彼女達が岬に佇むラストシーンの美しさ、その老齢な生の奥深さを感じ、心が震えた。 【onomichi】さん [インターネット(字幕)] 9点(2024-06-19 00:36:07)
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