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《ネタバレ》 気になっていたオッペンハイマーをようやく配信で鑑賞した。
以下、思いつくままに箇条書きする。 ◆養老孟司先生がよく書いているように、数学者は数学の世界を実在として認識している。 それと同じようにオッペンハイマーも、(この映画の中では)量子論的な世界が実在するものとして見えている。 そのことが、オッペンハイマーの神経症的なパースペクティブに繋がっており、この映画に絶え間ない緊張感を与えている。 ◆原爆を生み出すことは、人類史において「火」の誕生と同程度のインパクトがあるという意味で、オッペンハイマーをプロメテウスになぞらえるのは適切であろう。 ちなみに、この映画の原作となった伝記の原題には「アメリカのプロメテウス」(American Prometheus)とある。 プロメテウスが出てきたからというわけではないが、鑑賞後、ノーラン監督はオッペンハイマーの生涯をギリシア悲劇のように描こうとしたのではないかと感じた(もっとも、オッペンハイマーの奥さんはシェイクスピア劇に出てきそうなキャラクタではある)。 そう考えると、ノーランの次回作がオデュッセウスを題材とするものであることは、ある意味で自然なことなのかもしれない。 なお、オッペンハイマーの人生に悲劇的なところが多々あるとしても、最後は復権した姿が描かれており、この映画が悲劇的に終わるというわけではない。 ◆この映画が被爆国たる日本を軽んじているという意見があるが、理解できない。 第二次世界大戦後におけるオッペンハイマーの苦悩と水爆反対論が何に由来するのかに思いを致せば、オッペンハイマーが原爆を人類に対して使った「成果」をどのように思っていたか(あるいは、これをどのようにノーランが描こうとしていたのか)は明白である。 ◆ケネス・ブラナーは、存在感のあるよい俳優になった。 最近のノーラン映画での活躍から、マイケル・ケインがノーラン映画で占めていたポジションを継ぐのは彼であろうと思っていたが(英国のベテラン実力派俳優という共通項がある)、次回作の出演者としてはアナウンスされておらず、出演しないのであれば少々残念である。 ◆ラミ・マレックが演じる人物が終盤で重要な証言をするが、そのように証言した動機がよく分からなかった。 再鑑賞すれば分かることもあるのかもしれないが、とりあえず関連する書籍を読んでみるつもりである。 【山の木屑】さん [インターネット(字幕)] 8点(2025-03-03 12:45:16)(良:1票) ★《更新》★
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