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《ネタバレ》 棺桶に杭が打ち込まれるアップの映像を見た瞬間、自分の心に打ち込まれたようだった。死んだ…紛れもない事実の残酷さがこのシーンにはある。何度も後悔する父親。父親は「あの時、いっしょにランニングしていれば」と思い、さらに息子とランニングしている妄想にまで発展させていた。人は極限の哀しみを直視できないと思う。自分の心の中の本当の答えを知るのは怖い。父親の悲しみが私の痛みとして伝わってきた。亡くなってしまったものを心の中で過去を現在として反芻して想う。それを現実逃避と簡単に言ってしまうことなんて絶対に出来ない。ひとつひとつ丁寧に描かれていく。自分の感情が映画の中に溶け込んでゆく。おそらく人それぞれの心に映し出された「息子の部屋」という作品があるに違いない。息子のガールフレンドだった子には新しい彼氏がいるらしかった。私は、はっとした。彼女には「亡くなった息子(彼氏)」は時間的な過去となり、旅の途中の彼女には時間的な未来があった。その時、私は現実を間のあたりにした。そう、自分の心の中の真実、失ったものを目を逸らさず見た。そしてなにか感情が少しだけ変化した。止まった時間が動き出すかのように。ラストの浜辺のシーンで前に一歩進めた瞬間が訪れたのだ。本当に映画って不思議だ。こんな語り方もあるのだ。ひととき旅を共にしたこの家族の心にもなにか変化があることを掴めた。控えめだがなんとなくわかる空気間が絶妙の素晴らしいラストだった。3人三様に歩いてゆく浜辺のシーンにはそれぞれの未来が見えた。哀しみはずっと消えない。でも日常はすぎゆく。音楽が心に染みる静かなラストに、この映画のもつやさしい眼差しを感じた。
【ひいらぎ】さん 9点(2003-11-23 22:10:24)(良:1票)
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