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《ネタバレ》 インディアンは鹿の「鋭敏さ」を尊び譲り受けた。インディアンランナーは森の叡智を授かりし使者だろうか。弟フランクの前に現れる使者は「伝達のイメージ」であり、フランク自身が「使者」として描かれている気がした。その伝達で彼は両親の死を先に知り、怖れから会うことも出来ず、凄まじい哀しみの姿から親への深い愛が伝わってきてとても痛々しい。父の自殺は兄弟の絆を戻す望みにみえた(知り得た弟は嘆き自分を責めてボロボロになってしまう)純粋性ゆえに内面の狂気の抑制力が効かず、衝動は暴力へと繋がってしまう。不器用に生きることしか出来ない。兄の愛も純粋で直球だ。愛は重いのだろうか。無意識に弟を追い詰めたかもしれない。バーでの弟の論理や「不条理への怒りと悔しさ」は通じなく、正しい良き人生のお手本のような兄に対する激しい劣等感と、兄の優しさへ応えられない自分の不甲斐無さへの罪悪感で絶望の淵に墜ちてしまった気がしてならない会話だった。無邪気な子供の頃に戻れない。愛が人を傷つけ、狂気が人を癒す…。子供の誕生が近いことを知り重圧が恐怖に変わり凶行へ走る。「俺は正しい」という誇りを見せながらも兄を慕っている血まみれで憐れな弟の顔…兄は弟を放っておけるわけがなかった。逃亡する弟に生命の誕生が伝わった。男の子だった。その瞬間の弟の表情に後戻り出来ない無念さと後悔が滲んでいて切ない。逃げる結末しかない弟を静かに見送る兄の愛。子供の頃の2人に戻れた。最後にフランク(使者)はメッセージ(子供)を残したのだろう。本物の出産シーンだった。生命から生命が産まれる素晴らしい神々しさ。フランクの赤ん坊は母の慈愛に包まれていた。この世には愛がある。「人生はいいものだ」弟への、私たちへの希望の、あるいは救いの言葉だった。社会・街・人の映像描写の濃密なドラマは全てが繋がっていて感動を覚えた。インディアンへの敬愛…映像美に現れるその精神。狂気さえ炙り出す内面心理へのごまかしのない眼差し。家族への想いと兄弟愛。Janis Joplinに、ほとばしる熱い情熱と力強さに心が震えた。狂気と愛情が同じラインで急展開する破天荒な表現力は衝撃的だった。胸が苦しくなるような鑑賞後のやるせなさ…。ショーン・ペンは感情の全てを激しくこの作品に叩きつけた!インディアンランナー=時空を超えたメッセージ。この映画に巡り会えて本当に良かった!
【ひいらぎ】さん 10点(2004-06-12 01:42:03)(良:1票)
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