ショーシャンクの空に の スロウボート さんのクチコミ・感想

Menu
 > 作品
 > シ行
 > ショーシャンクの空に
 > スロウボートさんのレビュー
ショーシャンクの空に の スロウボート さんのクチコミ・感想
作品情報
タイトル名 ショーシャンクの空に
製作国
上映時間143分
劇場公開日 1995-06-03
ジャンルドラマ,刑務所もの,小説の映画化
レビュー情報
《ネタバレ》 物語がレッドを通して語られるため、全編を通して、やや説明的過ぎるところもありますが、時間軸をうまく操作しながら、観客を離さないストーリーテリングの巧みさは秀逸です。重厚な人間ドラマをたっぷり堪能しました。ただ、「あの塀を見ろ。最初は憎み、しだいに慣れ、長い年月を経て頼るようになる。」と言う、囚人たちの心理を一発で表現してしまう見事な台詞に代表されるように、この映画の持つ重みは、映像的要素ではなく、むしろこういった印象的な「台詞」の数々によって支えられていることは間違いないでしょう。「希望」や「勇気」を讃えるために用意されたラストシーケンスも印象的です。とは言っても、このラストが即時に「爽快感」に繋がるかと言えば、個人的にはノーでした。この映画全編を通して僕が感じたのは、人間が自ら創り出した、法律、法制度に支えられた「社会」というものの曖昧さであり、不完全さです。無実の罪で刑務所に入れられる者、あるいは、罪を犯しながらも罰せられない者。こうした事例は腐るほどあるはず。また、アンディが看守に財産運用の手ほどきをしていく辺りは、法制度、あるいは人間社会の不完全さをあからさまに描写しています。理不尽が存在するのは、塀の中だけではなく、塀の外であっても同じことなのです。この映画でいう「希望」とは、あくまでも、この理不尽、あるいは不運に襲われた時に「楯」になるべくものなのです。これを身に付けていなければ、ブルックスのように死を選ばざるをえないということになるのでしょう。まさに「必死に生きるか、必死に死ぬか」であって、この不完全な「社会」の中では、何かに「希望」を持っていなければ生きていけないのが現実なのです。この映画でいう「希望」とは、生きるために自らが己を守る「楯」なのです。ですから、ここで描かれる「希望」に、時として、非常に利己主義的なものを感じてしまうのは必然なのでしょう。レッドは幸いにしてこの「希望」という「楯」を手に入れ、アンディのもとに向かいますが、この再会が決して明るい将来を約束するものではないことは明らかではないでしょうか。この再会のラストで僕が感じたのは、「爽快感」などでは決してなく、むしろ、この理不尽な社会にあって、たとえ利己主義であっても、どうあっても「必死に生きることを選べ」という悲痛な、そして生々しいメッセージなのです。
スロウボートさん 8点(2004-10-30 19:46:41)(良:5票)
スロウボート さんの 最近のクチコミ・感想
投稿日付邦題コメント平均点
2005-01-28御誂治郎吉格子7レビュー7.00点
2005-01-19落第はしたけれど8レビュー7.50点
2004-12-26下妻物語5レビュー7.33点
2004-12-25大人の見る絵本 生れてはみたけれど9レビュー7.65点
2004-12-14最後の人10レビュー7.62点
2004-11-29ゴッドファーザー PART Ⅱ8レビュー8.35点
2004-11-21いま、会いにゆきます8レビュー7.48点
2004-10-30ショーシャンクの空に8レビュー8.66点
2004-10-11死刑台のエレベーター(1958)8レビュー6.64点
2004-10-03ヴァン・ヘルシング2レビュー5.43点
ショーシャンクの空にのレビュー一覧を見る


© 1997 JTNEWS