我が家の楽園 の スロウボート さんのクチコミ・感想

Menu
 > 作品
 > ワ行
 > 我が家の楽園
 > スロウボートさんのレビュー
我が家の楽園 の スロウボート さんのクチコミ・感想
作品情報
レビュー情報
《ネタバレ》 キャプラが描く最高級の人生讃歌です。笑いどころも満載で、これほど笑わせる映画との出会いは特別なものでした。と言いつつも、いつも思うのは、キャプラのヒューマニズムによって高らかに謳いあげられる人々は極めて少数の限られた人達であり、裏を返せばその本質は少数派ゆえの「いばらの道」であるということです。それゆえに予め敷かれたレールの上を歩むのではなく、これをはみ出して歩もうとする人々の勇気を賞賛し、その第一歩にスポットライトを当てていきます。「Do You Like it(そんなことして楽しいかい?)」。「我が家」の大黒柱であるバンダーホフが黙々と仕事をする事務員に唐突にかけたこの言葉によって物語に一気に引き込まれます。仕事は楽しいものではないと言うのが一般論で、楽しくないことをやっていてもしょうがないから、大好きなおもちゃを作りましょうというのは、その価値観はあっても行動するには大変な勇気が要ることでしょう。「我が家」で暮らす人々はこの勇気を持ち得た人々で、社会的にみれば、少数派で風変わりなおかしな人々です。当然、少数派の彼等の存在を高らかに謳い上げる行為は社会批判や風刺につながっていき、それを特に体現しているのが、バンダーホフと税務署とのおかしなやり取りのシーケンスで、キャプラのヒューマニズムにはこうした風刺は必然とも言えるでしょう。レールをはみ出す勇気。輝かしき第一歩。それどころか、この作品ではそもそもレールなんてないんだよ、というところまでメッセージしている気がしてきます。「我が家」の仲間入りを果たす勇気は持ち合わせている人は少ないけど、実は価値観を持ち合わせている人は多い。ラストで大富豪のカービーがハーモニカを手に取り、「我が家」に仲間入りした瞬間に、感動とともに大きな拍手を送りたくなったのは、自分がそんな価値観を持ち合わせており、映画の中でその勇気を体験したような心持ちにさせてくれたからなのでしょう。それにしても「我が家」の人々は面白い。傑作中の傑作だと思います。
スロウボートさん 10点(2004-01-30 23:24:41)(良:1票)
スロウボート さんの 最近のクチコミ・感想
投稿日付邦題コメント平均点
2005-01-28御誂治郎吉格子7レビュー7.00点
2005-01-19落第はしたけれど8レビュー7.50点
2004-12-26下妻物語5レビュー7.33点
2004-12-25大人の見る絵本 生れてはみたけれど9レビュー7.65点
2004-12-14最後の人10レビュー7.62点
2004-11-29ゴッドファーザー PART Ⅱ8レビュー8.35点
2004-11-21いま、会いにゆきます8レビュー7.48点
2004-10-30ショーシャンクの空に8レビュー8.66点
2004-10-11死刑台のエレベーター(1958)8レビュー6.64点
2004-10-03ヴァン・ヘルシング2レビュー5.43点
我が家の楽園のレビュー一覧を見る


© 1997 JTNEWS