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《ネタバレ》 作り物とはどこか思えず、実際に存在するキャラクター・ストーリーとしか思えないほど、なにもかもがリアルだった。
自分はプロレスをそれほど好きではないが、普通の人よりは多少知っているレベルだ。 最近でも、68歳のアブドーラ・ザ・ブッチャーと65歳のタイガー・ジェット・シンが戦い、両者反則負けという壮絶な試合をしたそうである。 本作を見ると、自分の世界でしか生きられない男は果たして不幸なのかということを考えざるを得ない。家賃を払う金もなく、愛すべき娘に嫌われて、相手にしてくれるのはストリッパーくらい。全身は傷だらけで、心身ともにボロボロ、まさに満身創痍という状態。リングの下では明らかにカッコいいとは思えない。しかし、いったんリングに上がると、あれほどカッコいい男がいるだろうかというほど輝いている。 不器用で無様で愚直な生き方とも思えるが、その無様な姿も貫き通せば、カッコよく見えてくる。 また、自分の道を貫き通せば、後悔することはなく、自分自身が納得できるのではないか。他人と同じような生き方ができなくても、普通の人が見られる世界ではないものを味わえるはずだ。 自分の世界でしか生きられない男は決して不幸ではなくて、やはり多くの人の憧れであり、カッコよくて、ある意味で幸せな男なのである。 全うな生活を送らなくてはいけないということを頭では分かっていても、心は拒絶してしまうものでもある。 それにしても、娘との食事の約束をすっぽかす理由が、ヤクをキメて、女とヤッていたことが要因になっているということがなんとも泣かす。誰かを助けていて約束を守れなかったり、プロレスの大事な試合と天秤に掛けるという特別な事情ではなくて、リアルに約束を忘れるということが重要な気がする。 自分の世界で生きる男は、やはり全うな生き方はできないのである。 全てを捨てており、頭と心にあるのは、その世界のことだけなのかもしれない。 その分、多くの代償を払う必要があるが、きっと後悔はしないだろう。 プロレスラーだけではなくて、スポーツ選手、歌手、お笑い芸人、俳優など、かつてはスターだったのにこの世界にしがみついている人たちがいる。 明らかに全盛期を通り過ぎているにも関わらず、無様にもがき続けている。 そういう人たちを見る目が本作によって変わるかもしれない。 大切な精神を失わない限り、きっと彼らの輝きは失われないだろう。 【六本木ソルジャー】さん [映画館(邦画)] 8点(2009-08-02 23:29:22)(良:2票)
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