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《ネタバレ》 ハリウッドで年に数本製作されるティーン向けSFですが、外に待ち受ける迷路が大人社会の暗喩で、状況打破のためそこに切り込んでいこうとする者と、現状維持のため内に籠ることを望む者が対立するという構図や、記憶喪失からスタートして「自分とは何者か」を探るという物語はティーンの成長過程を作品に取り込んだものであり、「結構ベタベタですなぁ」と思いながら鑑賞しました。自分もいい年になったので、残念ながらこういう話にストレートに感情移入しながら見ることはできなくなったようです。
ただし、ストーリーテリングは型破りで、いい意味で裏切られました。三部作構成を謳いながらも、本作単独でも話を成立させようという配慮があり、主人公たちが迷路から脱出して世界の謎を暴くというところまでやってくれたので、ストレスなく鑑賞することができました。迷路の脱出過程にしても、中盤にてランナーのリーダーが「実は迷路の隅々まで把握はできている。ただし、最後の壁の突破方法が分からない」と告白し、迷路の攻略過程を大幅にカットしています。この大胆なリストラによって、迷路攻略に係る知的なやりとりは大幅に減ってしまったものの、その一方で、迷路に入っては出ることを繰り返してその内部構造を探るという視覚的に地味な作業が省略され、最後の壁の突破という一点のみに物語の焦点が定まったことから、作品全体に勢いが出るというメリットがありました。私はこの取捨選択を支持します。 気になったのは、細かい部分で設定を煮詰めきれていないということでした。思春期の男ばかりの集落に、突如かわいい女の子が放り込まれれば何が起こるのか。作品の性質上、展開が生々しくなりすぎてはいけないということは承知しているものの、それでも性欲全開の時期の男子を集めておきながらセクシャルな問題にまったく触れていないことには違和感を覚えました。そもそも、あの状況でおかしくなったり自暴自棄になったりする者が皆無で、みんな秩序正しく生きていることが不自然だったし、ボロを着ている割に髪型だけはバッチリ決まっていることもヘンでした(エレベーターで整髪料も届けられてるのか?)。些細なツッコミでも積もれば山となるわけです。その辺りのどうでもいい疑問を抱かせないような方便があれば、より良い作品になったと思います。 【ザ・チャンバラ】さん [ブルーレイ(吹替)] 6点(2015-10-14 15:42:36)(良:1票)
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