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どれだけ優れた映像に仕上げるか、という点を追求すると、ストーリーが置いていかれてしまうことが多々ある。しかし、3つのストーリーを均等に分かりやすく展開させ、グロテスクな殺人シーンの中にもユーモアをたっぷり詰め込む、という編集で、本作は見事にこの点をクリア。よくよく考えてみれば、原作の雰囲気を壊さないための作風だから、当然のこととも言えるが。3つの異なる物語も、どれも興味を惹かれるものである。特に”That Yellow Bastard”は、一作の長編映画として完成させることができてしまうほどの出来だ。ハーティガンとナンシーの再会シーンでは、彼が耐え続けた8年間を思い、どこからか熱いものがこみ上げてくる。やはり冤罪をテーマにすると、観客の心を掴みやすくなるのだろうか。勿論、原作を忠実に再現したと言われる映像もハイクオリティだ。モノクロの中に情熱を示す、真っ赤な色だけが浮かびあがり、観るたびにドキッとさせられる。他にも目の色だけカラーを使っていたりして、細かく丁寧に作りこまれている。センス抜群。豪華な俳優陣も魅力的である。中でも郡を抜いて良かったのは2人。殺人鬼を演じたイライジャ・ウッドは、今までのヘタレイメージを大返上。短い出演時間にも関わらず、強烈なインパクトを残した。”The Hard Goodbye”の主役であるミッキー・ロークは、本作で見事に復活!男なら誰でも憧れを抱くであろう、孤高の狼的な男を演じ、本作で最も輝きを放っていたのは彼。それと、ジェシカ・アルバ、デヴォン青木の女性組も良かったし、更には、ベニシオ・デル・トロとクライヴ・オーウェンの掛け合い漫才のようなやり取りも大いに笑わせてもらった。…と、色々言ってみたが、本作の最大の魅力は、男臭さの中に漂う哀愁だと思う。男という生き物は、だいたいがカッコつけて生きたいもので、いかに自分をカッコ良く見せるか、が、人生における永遠のテーマ。この作品に登場する野郎どもは、それを追い求めるばかりに、もがき、悩み、苦しんでいる。そこに垣間見える哀愁に、僕は大変共感を覚える。そして本作も、カッコ良さだけを追求しているのだ。作り手も実に男らしい。その潔い姿勢に、僕は男として心から拍手を贈りたい。
【こばやん】さん [映画館(字幕)] 9点(2006-04-05 02:26:23)
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