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過ごしている時間の速度が全然違うな、と思った。東北まで1日以上かかる電車に二人で揺られたから高峰秀子は途中の温泉街で下車する決断を下せたのだと思う。「はやて」ではこの映画は成り立たないのである。電車のシーンからラストまでの展開は本当に息を呑むシーンの連続で、最後のクローズアップは呼吸が止まる。それにしても加山雄三よかったなー。今まで「サライ」とか若大将的なイメージしかもってなかったのだけど。加山雄三が飯をいっぱい食うだけで楽しかった。そして「ぼかぁ義姉さんが好きだ!」と言わせるほどの高峰秀子のけなげな後家ぶりに胸が痛くなる。あのシーンの時だけ茶の間の雰囲気はガラリと変わり、そこから物語は一気に転調する。だがこの映画、それまではドタバタ劇のような語りが進行する。スーパーの宣伝カーをまるで死神の襲来のように見つめる商店の人々のまなざしには思わず笑ってしまう。彼らにしてみれば笑えない事態なんだけど、笑えない事を笑いにする事にかけて、成瀬監督のセンスはとにかく冴え渡る。喜劇とか悲劇とかいう枠組みを越えて、人間の滑稽さ・あわれさや戦後の家族のあり方を背景におきながら、映画的興奮を常に喚起させるその圧倒的な才能。この映画は成瀬の映画の中でも飛びぬけてお気に入りです。
【Qfwfq】さん [映画館(字幕)] 10点(2005-06-21 14:41:43)(良:1票)
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