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映画の中で流れる音楽には、映画内の人物が聞こえる音楽とスクリーンを見つめる観客にしか聞こえない音楽の2通りがあると思う。「めがね」において、前者は光石研や市川実日子が弾くマンドリンとメルシー体操の時に流れるピアノの2つだけだろう多分。マンドリンの方はまあいいとして、どうにも引っかかるのはピアノの音楽である。というのも、体操のシーンでピアノは一度も登場しないし、そのピアノの音楽を流すラジカセ的な機具も、やっぱり登場しないからである。確かにあの海辺に黒々したピアノをドーンと構えるのは勇気の要る事だし、外部からの情報を出力する装置の存在は、いつだってユートピア崩壊の引き金である(携帯もテレビもパソコンも、ここではなんの効力も持ってはいけない)。ユートピアを成立させる為には、その存在自体が矛盾である事を認識しつつ、それでもその存在が確かである事に全身全霊を懸けなければならない。そこまでいかなくとも最低、見かけ上だけでも立派な偽装が必要だろう。ピアノ音の中途半端な使用は、ユートピアの原則に反すると思われた。また、冒頭の空港のシーンであえて空港の名を隠しているのだが、そのあまりに安易な発想による場所の無名性の発露からしてやはり偽装は上手くいってないと思う。でもまあ、市川実日子はやはり才能がありますよ、ツンデレの。
【Qfwfq】さん [映画館(邦画)] 6点(2007-10-29 22:06:02)
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