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《ネタバレ》 批判的なコメントも多いが、個人的には非常に面白く見れた。人間の際どい心理のバランスと、それが浸食されていく過程がよく描けていると思う。
■最初の方で「もしや・・・」と思って、ラストで同じ展開を見せたので恐らくこの理解でいいと思うのだが、この映画の構図は「ファイト・クラブ」と基本的に同じだと思う。ただしこの映画の場合、リリー(という人間)そのものは実在するが、そこに対する嫉妬と「自分の持っていないもの(黒鳥の要素)への憧れ」も相まって「反転した自分」の投影されたリリーもまた立ち現われていると考えていいだろう。 ■これはバーで「薬」を飲む前からそうだと考えられるのは、ニナはもとから自傷癖がある(幻影を最初から見うる)という設定が示唆している。この作品は徹底してニナの視点からしか描かれないが、映画内の描写は事実を表すというより「彼女の心においてみる世界」であることを意識してみると、この作品の見え方はだいぶ変わると思う。 ■ニナは結局、自らの肉体の破壊と引き換えに自身の精神の合一を果たし、完璧な芸術の境地へと至る。これは芥川龍之介の『地獄門』などとも比較しうる、完璧な芸術の保有する「ある種の狂気性」の体現ともいえるであろう。 ■それを考えると、ニナは監督の厳しさや母親の過剰な期待、プレッシャーに負けたというより、自らの精神を芸術の世界における完璧さに高めるために狂気の世界へ立ち入った、と見る方がいいのかもしれない。少なくともその側面も確実に混じっていると思う。 【θ】さん [DVD(字幕)] 9点(2011-11-27 01:30:09)
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