運命を分けたザイル の よしのぶ さんのクチコミ・感想

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運命を分けたザイル の よしのぶ さんのクチコミ・感想
作品情報
タイトル名 運命を分けたザイル
製作国
上映時間107分
劇場公開日 2005-02-11
ジャンルドラマ,アドベンチャー,ドキュメンタリー
レビュー情報
《ネタバレ》 絶体絶命の雪山遭難から奇跡の生還を果たした登山家の物語。“絶体絶命”は掛け値なしで、これを奇跡と言わずして何を奇跡というだろうか。それほど絶望的な状況だった。1985年英国人のジョーとサイモンの二人が未踏峰のアンデス山脈シウラ・グランデ峰の西壁に挑む。無事登頂に成功するが、下山中に雪庇が崩れ、滑落したジョーが右足を骨折してしまう。二人はお互いの体をロープで括り、ジョーがロープの長さだけ滑べり落ち、落ちた地点にサイモンが合流する方法で下山する。それを繰り返すうち、ジョーは氷壁に宙吊りになってしまう。折しも吹雪で視界はきかず、声も届かない。共倒れを防ぐ為、サイモンはロープを切る。ここから奇跡が始まる。ジョーは45mも落下して氷棚に叩きつけられるが、命はとりとめる。急峻な氷壁は登れず、仕方なく地下に降りると偶然にも地表へ通じる出口が見つかった。そこから迷路のような氷河を這いずりながら抜け、と氷堆石帯に出た。そこからは片脚と杖代りのアイスバインで、激痛に耐えつつ、文字通り転がりながら移動し、9㎞の距離を5日間かけて漸くキャンプに辿り着いた。幸運にもサイモンはキャンプを去らずに待機していた。観ていて“痛い”ことおびただしい。何度も目をそむけた。痛いだけでなく、体感温度マイナス60度の極寒、飢餓、絶望感、死への誘惑に耐えながら一歩一歩すすんでいく姿は凄絶で筆紙に尽くしがたい。強靭な精神力があってこそだが、強い生への執着があったのかといえば、そうでもなく、本人に言わすと「生き抜くために進んだんじゃない。死ぬときに誰かにいて欲しかった」かららしい。死を意識したとき頭に浮かんだのが、好きでもないディスコ曲だったという話も体験者にしかわからぬことで、生々しい。長い距離も20分ごとに目標を定めて歩んだ積み重ねの結果だという。サイモンは、ジョーが怪我したとき、「このまま転落してくれたら」と告白し、ロープを切った重荷を一生背負っていくという。学ぶことの多い映画だ。特筆すべきは撮影技術で、空撮、遠景、俯瞰、仰視、アイゼンとアイスバイルの大写しを巧みに使い分けている。山岳映画の最高峰だろう。現地で撮影し、クレバスも本物、空撮に映る姿は俳優ではなく、本人だ。山岳美も素晴らしく、粉雪の作りだす「アンデスの悪魔」は必見。再現劇方式で本人達が顔を出すが、年月を経ている為、冗談交じりになっているのが残念。
よしのぶさん [DVD(字幕)] 8点(2015-02-04 05:43:27)
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投稿日付邦題コメント平均点
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