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《ネタバレ》 戦前の映画でこれほど凝った映像を撮っていることに驚きました。心奪われるシーンが多いです。とりわけ火事の場面が出色。じわじわ画面を覆う不気味な黒い煙。食堂で順番に振り向いて立ち上がる群衆のカット。消火に入った男が直後に退路を絶たれ、紅蓮の焔の中に倒れる。何度も見たいシーケンスです。放水するダム。映画館で劇中映画と現実の銃撃戦のシンクロ。横転した巨船。自由の女神のシーンで次々と切り替わる視点。ゆっくり転落してゆく悪党。象徴性に富んでいます。ロマンスも楽しめる。ケインを信用しないパットが心開いたゆく経緯も面白い。激しく喧嘩しているのを見た老譲が「なんて仲いいんでしょう」と羨ましそうに言うところはツボ。蛇嫌いなのに「蛇使い」にされる。ケインにではなく、ケインを助けようとするサーカスの団員に心動かされてケインを信じるようになるのは斬新と思いました。他にもケインを善人と見抜く盲人、ケインを助けるトラックの運転手もナイスなど印象的な人物が目立ちます。最も驚いたのはヒゲ女ですが…。性善説を前提にした映画ですね。一方で悪党も善人らしく描かれているのはどうか?物腰の柔らかい大牧場主やチャリティー好きのサンセット夫人、嬉々と自分の家族のことを語る工作員。ちょっと待てよと言いたい。複雑な人間像を狙ったのはわかるが、巨悪として描かないと物語が成立しないと思う。敵役は上流階級のようなのでそのように描いたのか?祖国(ドイツ)のために身を捧げる殉教者として敬意を表しているのか。文化の違いからくる誤解なのか、しっくりきません。脚本も迷路にはまってしまったのでしょうか。そのせいか悪者が間抜けに見えてしまいます。気になったところ:①パットはソーダシティからどうやって抜け出したの?②ケインは地下室でスプリンクラーを作動させたあとどうやって脱出したの?③パットは部屋に閉じ込めらているのに注文したジュースが届き、お金を払っていた。④フライが自由の女神の階段で拳銃を落とした。そんな!ここは拳銃を持っているフライにケインが勇敢に立ち向かっていくほうがいいでしょう。⑤パットの看板文字や本の題名の小ねたは冴えていた。だが、パットが有名モデルであるという設定は生かされていなかった。
【よしのぶ】さん [DVD(字幕)] 8点(2009-09-23 03:03:42)
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