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《ネタバレ》 朝鮮民族の南北分断の悲劇を題材にした作品で、脚本と製作総指揮はキム・ギドクだ。
プンサンケは離散家族の為に命懸けで、軍事境界線を越えて物や人を届ける運び屋で、その正体は誰も知らない。ある日、南に亡命した北朝鮮高官キムの愛人イノクを北から運んだことから、南北政治がらみの予期せぬ危難に巻き込まれていく。韓国情報局、北の工作員、それぞれの組織から拘束され、拷問を受け、無理な命令をされたりと惨憺たる目に遭う。漸く難を逃れたが、移送途中で情を通じたイノクが殺されたことから、両組織に復讐を誓う。彼らを次々と拉致しては密室に閉じ込め、殺し合いをさせるのだ。それ以後も彼は運び屋を続けていたが、とうとう柵越えに失敗して、銃殺されてしまう。彼が最後に見たものは、軍事境界線上の空を自由に飛びかう鳥たちの姿だった。格闘、暴力場面が多く、全体を通じて心理緊張劇だが、イノクを運ぶ場面は恋愛喜劇、キムがプンサンケに嫉妬する場面は感傷通俗劇、両組織の密室場面は諧謔の要素が入る。全体に統一が取れてないのだ。前半の流れは完全に恋愛劇だが、途中で女主人公が死んでしまい、後半は別の物語となる。観客の期待を裏切る、意表を突いた展開だ。斬新ととるか、不合理ととるか、意見の分かれるところだろう。 これは人間の極限の姿を追求するキム・ギドクの“孤高”の脚本を、監督が一般受けするように改変したためと思われる。興行的成功を焦るあまり、様々な要素を詰め込んでしまったのだろう。良い素材を生かしきれておらず、南北分断の悲劇が薄められてしまった。 運び屋のプンサンケに同情する心優しいイノク、常に暗殺に怯え、猜疑心を強くしていく元高官、北への忠誠を口にしながら南の豊かさに抗しきれない工作員など、人間の機微が描けていて味わい深い。 不満な点。ソウルとピョンヤンは距離200㎞あり、3時間での往復は車でも難しい。ましてや自転車とバイクでは無理だ。プンサンケとイノクが水に浸かるが、服の乾き方が早すぎる。元高官の嫉妬があまりにも子供じみている。「キスか人工呼吸か」では、苦笑せざるをえない。その元高官に超人のプンサンケが不覚を取るのは面白くない。最後に主人公が軍事境界線をどうして昼に渡ろうとしたのか謎である。尚開始4:17でオダギリジョーが人民軍兵士としてカメオ出演している。 【よしのぶ】さん [DVD(字幕)] 7点(2015-02-05 13:32:06)
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