浮き雲(1996) の よしのぶ さんのクチコミ・感想

Menu
 > 作品
 > ウ行
 > 浮き雲(1996)
 > よしのぶさんのレビュー
浮き雲(1996) の よしのぶ さんのクチコミ・感想
作品情報
タイトル名 浮き雲(1996)
製作国フィンランド
上映時間96分
ジャンルドラマ,コメディ
レビュー情報
ハリウッド映画の演出過剰、過激な映画を観慣れていると、この作品のようなあらゆる意味で抑制の効いた”つつましい”映画が新鮮に見えてくる。最小限の科白しかなく、表情は常に無表情、アクションも控えめで、これといった盛り上がりの無い日常を淡々と描く。結論を見せない演出も特徴のひとつ。職場をクビになったり、就職に失敗したり、賭けで負けたりする場面などは最後まで描かれず、次のシーンで結果が暗示される。顔の表情だったり、酒の飲み過ぎで倒れていたりと、笑える仕組み。省略の達人である。無表情キートンのように観客を突き放すのではなく、ほのぼのとした温かみが感じられるのも佳い。独特のセンスがひかります。どのジャンルにも当てはまらないような映画だが、しいて分類すればコメディ。それも大笑いや中笑いではなく、ペーソスの中に温かみのあるクスリ笑い。物悲しさと笑いの同居はチャップリンを彷彿させる。慣れてくると登場人物の飄々としたおとぼけぶりに笑いを禁じ得なくなってくる。味わいがあるんですね。あと意表を突く演出が多いのも特徴。例えば、アル中で包丁を振り回すシェフ。その存在だけでも笑えるのに、彼を取り押させるのに男性が失敗し、女性が殴って取り押さえる。その様子を一切見せない。科白もない。あっという間に何事もなかったかのように収まり、翌日シェフは怪我させた男に治療代を毎度の事のように払う。このシェフが失業してホームレスにまで落ち込むが、アル中更生施設を経て復帰するのも意表を突く。悪徳職業斡旋所で騙されたはずが職が見つかったり、結局そのオーナーがが悪徳経営者だったりと、どこまでもすっとぼけた脚本。これといった盛り上がりがないのに退屈しないのは”意表”の効用でしょう。この映画は監督の人生観や性格が強く反映されている思う。これだけユニークな映画はめったにないから。つつましく、引き籠り系の性格であることは想像がつく。物語は、共に失業して仲たがいした夫婦が絆を取り戻す話と、やむなく廃業したレストランを再開させる話。ハッピ・ーエンドで陽気な音楽がかかっても、あくまでも笑わない夫婦。感情を表に出さない国民性が下地にあると思いますよ。そんなことを考えてしまう奇妙な映画でした。この独特の世界観は癖になるかも。良作です。
よしのぶさん [DVD(字幕)] 7点(2012-09-08 23:04:51)(良:1票)
よしのぶ さんの 最近のクチコミ・感想
投稿日付邦題コメント平均点
2015-02-198レビュー6.62点
2015-02-16死霊の盆踊り3レビュー0.76点
2015-02-11ゼロ・グラビティ9レビュー7.63点
2015-02-09パシフィック・リム10レビュー6.88点
2015-02-08エベレスト 若きクライマーの挑戦<TVM>5レビュー4.80点
2015-02-0717歳のカルテ7レビュー6.99点
2015-02-07噂の女7レビュー7.30点
2015-02-06華麗なる激情7レビュー6.00点
2015-02-06影の車6レビュー7.00点
2015-02-05第9地区8レビュー7.07点
浮き雲(1996)のレビュー一覧を見る


© 1997 JTNEWS