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《ネタバレ》 母の愛情を独占したい幼少期に、母の元へ通ってくる愛人がいて、二人の艶場を目撃してしまったとしたら、その愛人が憎くてたまらないだろう。六歳のときにその愛人を実際に殺してしまった男の悲劇の物語である。大人になって妻帯者の浜島は、幼馴染で今は未亡人の泰子と再会して、不倫関係に発展していくが、泰子には六歳になる男児がいた。いつまでも懐かない男児に対して浜島は、自分に殺意を持っているのでないかと疑念を抱く。男児の気持ちは痛いほどわかるのだ。毒入り団子を誤食したり、居眠り中にガスが漏洩する事件が発生すると、浜島は恐怖におののき、泰子の家に近づかなくなった。事情を知った泰子に勘違いだと諭され、宿泊した夜に事件が突発した。便所から出た浜島の前に斧を持った男児が出現、慌てた浜島は男児の首を絞めてしまう。刑事から、「まだ六歳の頑是ない子に殺意などあるはずがない」と詰難されると、浜島は「あるんだ!」と封印した忌まわしい過去を告白する。
人間の心理を鋭く抉った深みのある作品だが、共感はしなかった。 普通の人は、懐かない子供はいるが、殺意までは抱かないだろうと考える。けれども、浜島は実際に殺人を犯しているので、恐ろしくて仕方がない。罪の意識が妄想を生み、惑乱したのだろう。しかし、例えば六歳の男児が自分に対して殺意を抱いているとして、恐怖を覚えるだろうか。鉈や斧やナイフを自由に操る、田舎育ちの子供でない限り恐くはないだろう。やはり設定に無理があるのだ。 映画は二人の日常生活を平坦に描くが、特に前半は非常に退屈した。二人の仕事ぶりと不倫に到る感傷的通俗劇が丁寧に描かれるのは良いが、事件らしきものが何も起こらないのだ。短編映画を長編映画にした弊害である。浜島の妻が夫の浮気に気づくとか、泰子が保険金殺人などに関わるとか、より複雑な構想が望まれる。また、殺人は未遂に終わるので悲劇性が薄い。 原題は「潜在光景」で、「影の車」は「潜在光線」の収録された短編集の題名だからややこしい。影の車って何だろうと、ずっと考えていた。 【よしのぶ】さん [DVD(邦画)] 6点(2015-02-06 13:17:39)
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