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レビュー情報
《ネタバレ》 役者陣の素晴らしい演技に加え、内容や流れ、細かい描写にも気を配って作られている良作。サスペンスの形を取っているが、犯人を探す過程で息子の本当の姿を知り、自身の名誉・愛国心が壊れていく姿を描いた社会派ヒューマンドラマとして見るのが正しいだろう。戦争を経験した事でおかしくなっていく軍人たち、腐敗してしまった組織、間違った戦争をする政府などにどうしても目がいきがちだが、注目すべきは父親の感情の変化。バリバリの愛国心を持つ元軍人の息子。彼は何の為に戦ったのか。父親の様に愛国心があるわけじゃない。ましてやイラクが憎いわけでもない。父親の名誉の為だ。立ち止まればやられてしまう異常な世界で息子は必死についていく。ドラッグ、ストリップ、飲酒運転、周りも腐敗しきっている。一刻も早く抜け出したいが、父親の名誉を傷つける事は出来ない。そうしていつしか息子はおかしくなっていく。犯人を追う中で、父親は息子が国のためではなく自分のために戦った事を知り、愕然としたに違いない。息子を殺した犯人が明らかになるが、彼と対峙しても父親は何も言わなかった。なぜなら息子と同じだからだ。そしてそんな息子を腐敗した軍隊に送り込み、戦わせたのは他ならぬ自分。グラフの一番上にあった名誉・愛国心。下にあった息子への愛。映画が進むにつれこれら二つが交わり、そして最後は完全に逆転する。ラストに国旗を使った事でうまくまとめ過ぎな感はあるが、ただ単に戦争や軍部を批判する映画が多い中で、1歩踏みこんだ勇気ある作品と言える。時代は変わった。国を思い、親を思うがゆえに生まれる悪循環。この悲しい状況を一緒に考えていきましょうという強いメッセージを感じた。
【オニール大佐】さん [DVD(字幕)] 8点(2009-05-01 19:17:57)(良:2票)
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