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《ネタバレ》 最近は“東京裁判史観”なる用語まであって色々と論議が尽きない東京裁判、判決から35年後に裁判を真正面からとらえたこのドキュメンタリー、製作からほぼ40年たった現在でも考えさせられることが改めて湧いてきます。■とにかく上映時間四時間半はめちゃくちゃ長い。でもよく考えると、ニュルンベルク裁判と違って判決までほぼ二年半も続いたわけで、真面目に追ったらこれぐらい長くなるのもやむを得ないかなと思います。最も昭和初年から敗戦そして占領時代までの挿入された記録フィルムだけで全部足すと一時間近くになるけどね。高校生あたりの現代史授業の教材としてはうってつけかもしれません。■検事側すら最終論告で言及しているように、ナチスの犯罪をさばいたニュルンベルク裁判の被告たちと東京裁判の被告は同列に置かれるべきではない。これは私個人の感想ですが、東京裁判は政治家・官僚組織がその行政および外交の失敗が罪に問われた珍しいケースなんじゃないでしょうか。大日本帝国はドイツ・イタリアの様に一人の独裁者が好きなように動かせた国家じゃなく、明治憲法の下での集団指導で運営される体制で“天皇制独裁”なんて大嘘です。明治維新以降だんだんと国家の指導層が劣化してゆきついにたどり着いたのが敗戦だったわけで、その意味ではA級戦犯の中には万死に値する人物がいるのは確かだと思います。とは言ってもそれがいわゆる勝者によって断罪される筋合いのことかというと別問題です。温度差があったとはいえやはりこれは連合国による復讐で、裁判自体が戦争行為の一部で正義とは無関係なんじゃないでしょうか。■こうやってじっくり見させていただくと、勝者の法廷の粗や杜撰さが発見できました。まず裁判長以下の判事団は、それぞれ母国で法曹に関係していた面々だけど、国際法の専門家が一人もいないというのが驚きです。ソ連とフランスの判事に至っては、英語も日本語も理解できなかったというから呆れます。中でも裁判長のウェッブが日本憎悪に凝り固まっており、何が何でも天皇を訴追しようとゴネるわけです。首席検事のキーナンがこれまた典型的な強面で、ギャング相手みたいに被告たちに接します。でもマッカーサーからは天皇を訴追しないという方針を伝えられており、ウェッブを抑え込もうと陰で東条英機の失言をまるで弁護人の様に修正させるのがなんか滑稽。ソ連の検事に至っては日露戦争も日本の有罪要因だと主張、ここまで来ると失笑するしかないですね。その反面、各被告についたアメリカ人弁護人たちの弁論は想像以上に雄弁で、学会の大御所を引っ張ってきた日本人弁護人とは比べ物になりません。彼らは本国でも無名の弁護士たちですけど、やはり訴訟大国だけあってその能力は半端ないです。■判決はご存知の通り七人が絞首刑ですけど、やはりただ一人文官で死刑になった広田弘毅はさすがに可哀想でしたね。なんせ南京事件が彼の責任とされているのにはびっくりです。あと、全員が有罪というのは驚くべき厳しさ、ニュルンベルク裁判でも何人かは無罪だったのにね。しかしこの被告たちの人選には首を傾げるしかないです。大川周明なんて、当時の日本人でも知らない人がほとんどでしょ。この被告人選定には、なんか日本人で入れ知恵した人がいたんじゃないでしょうかね。あと海軍から死刑が出なかったのもなんか腹立つ、永野修身が生きていたらたぶん死刑だったんじゃないかな。宣告後に隣の留置所から死刑を免れた嶋田繫太郎の高笑いが聞こえてきて腹が煮えくり返った、と武藤章が手記に残しています。
【S&S】さん [CS・衛星(邦画)] 7点(2022-06-12 22:55:13)(良:1票)
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