ぼくのエリ 200歳の少女 の keiji さんのクチコミ・感想

Menu
 > 作品
 > ホ行
 > ぼくのエリ 200歳の少女
 > keijiさんのレビュー
ぼくのエリ 200歳の少女 の keiji さんのクチコミ・感想
作品情報
タイトル名 ぼくのエリ 200歳の少女
製作国スウェーデン
上映時間115分
劇場公開日 2010-07-10
ジャンルホラー,サスペンス,ファンタジー,ロマンス,小説の映画化
レビュー情報
 映画が始まってしばらくは、少々もったいぶった演出が鼻につくというか、やっぱベルイマンの国かあなどと感じてもいたのだけれども、けっきょくこの作品はわたしにはやはり(当然ながら)ホラー映画で、そのホラー映画であるところの「お約束」シーンの演出がシャープだという印象になる。
 ストーリーは主人公の12歳のいじめられっこの少年からの視点と、その外の世界の客観描写とが並行して描かれていくけれども、このふたつはけっきょく、少女の姿をしたエリというヴァンパイアの存在を通して重ねられていくことになる。少年の視点からみれば、さいごにはいじめっこたちから解放され、エリとのきずなを確乎としたものにして、それはハッピーエンドにみえるわけだけれども、客観的な視点からすれば、そういう見かたも出来なくなるだろう。このあたりはホラーだから、ということではないのだけれども、個人の幸福とは一面で世界とのきずなを断ち切ることで成り立つというあたりを、映画としてしっかり描いているのが新鮮だった。このあたり、主人公の少年がいかにも北欧あたりの、まつげまでプラチナブロンドの、ミネラル不足のなよなよした(たしかにいじめにあいそうな)少年であることと、ヴァンパイアのエリが東欧系というか、ロマを思わせるおおきな瞳の黒髪の少女であることとの対比が強く印象的で、このヴァンパイアが長いサイクルでひとところへの定住の出来ない種族であることを匂わせるセリフもあり、スウェーデンという風土をうまく生かした「ヴァンパイア伝説」の造形化なのだなあ、と思った次第。
 で、そのホラー的な演出についてなんだけれども、日常的な光景にスルリと怪異をすべりこませる演出はその視点のおき方がクールというか、ときに黒沢清監督の演出を思い出さされるものでもあった。とくに、クライマックス的なプールでのシークエンスでの、プールの水のなかから描かれる惨劇と、そのあとの鳥瞰的なショットとの連続からは、ほんとうに久々にホラー映画的なカタルシスを得ることになった。また、ここまでの展開は「いじめ」と「超常」とのタッグということでもあって、そう考えると、この主人公の少年が超常能力を持っていたりヴァンパイアであったりするわけではないけれども、少年の造型は「キャリー」のシシー・スペイセクの姿に比べられるものでもあるだろう、と思う。
keijiさん [映画館(字幕)] 8点(2010-12-28 16:52:15)
keiji さんの 最近のクチコミ・感想
投稿日付邦題コメント平均点
2014-11-22シャイニング(1980)9レビュー7.38点
第三の男9レビュー7.53点
2014-07-05チャイナタウン9レビュー7.03点
2014-02-23父ありき7レビュー7.20点
2014-02-14扉をたたく人6レビュー7.24点
2014-02-11かぐや姫の物語2レビュー7.19点
2014-01-17カプリコン・17レビュー7.18点
2014-01-03アルゴ8レビュー7.15点
2013-12-29三十四丁目の奇蹟(1947)1レビュー7.48点
2013-12-13残菊物語(1939)10レビュー8.88点
ぼくのエリ 200歳の少女のレビュー一覧を見る


© 1997 JTNEWS