母べえ の かっぱ堰 さんのクチコミ・感想

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母べえ の かっぱ堰 さんのクチコミ・感想
作品情報
タイトル名 母べえ
製作国
上映時間132分
劇場公開日 2008-01-26
ジャンルドラマ,戦争もの,実話もの,小説の映画化
レビュー情報
《ネタバレ》 最初から不快な人間像を次々見せつけられるのは辟易するが、全体としては単調に進行していき、防空頭巾で逃げまどう場面もないまま現代に至り、だからどうした、という感じで終わりそうなところ意外にも、最後の出来事が大きな違和感を残す作りになっている。
数十年後に長女は医師、次女は美術教員になって孫も何人かいたようで、それで何の不足があるかと思うわけだが、現時点でどれだけ満たされていても戦前戦中の恨みだけは絶対忘れない、ということを言いたいのか。仮に霊魂というものが存在するとした場合、死ぬ間際に強い感情を残すのは、いわゆる“成仏できない”ことにつながるように思われるが、人の安らかな死を妨げてまで言うことを言わせなければ気が済まないというところが、こういう世代の最後の執着なのかも知れない。
それにしても、それまでの経過を一応見せられた自分としては、夫が「思想」のせいで弾圧されたからといって「改心」までする必要はないのであって、単に社会的圧力に屈して隠していればいいだけのこととしか思われない(検事が言っていたのもそれ以上のものではない)。思ったことをそのまま言う自由、つまり表現の自由は家族の幸福にも優先することを表現したかったのであれば、その表現自体は自由だが自分としては共感しない。

登場人物としては、間抜けなところのある青年は東北(作家の藤沢周平と同郷らしい)、下卑た叔父は関西という形で、性格と出身地の対応関係をわかりやすく設定している。父親の出身地を広島にしたのは劇中の死者を一人増やす目的だったらしい。
そのうち叔父の発言はなかなか痛快である。「贅沢は素敵だ」というのは当時からあった茶化し方だろうが、“世の中理屈でなく金がものを言う”というのは、役に立たない大義とか主義主張とか信念とかに対抗しうる合理的発想であり、今日でも通用する世界共通の価値基準と思われる。ただ世界中がそれだけになるとさすがに弊害がある(戦争の原因にもなる)ので、これは今後の人類の課題ということかも知れない。
ほか個別の場面としては、近所の少年が「誰あのきれいなお姉さん」と言って逃げ去る直前の一瞬の表情には本当に笑わされた。また海水浴の場面で、水難救助のために主人公がいきなり海に入って泳ぎ始めたのは少し驚いた。もともと水泳が得意とのことで、この時点で××歳過ぎていたはずだがなお壮健ということらしい。
かっぱ堰さん [DVD(邦画)] 4点(2017-05-01 19:57:30)
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