スパニッシュ・ホラー・プロジェクト エル・タロット<TVM> の かっぱ堰 さんのクチコミ・感想

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スパニッシュ・ホラー・プロジェクト エル・タロット<TVM> の かっぱ堰 さんのクチコミ・感想
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《ネタバレ》 「眠れなくなる映画」(Películas para no dormir)という6作シリーズの一つで、原題の「Regreso a Moira」は「モイラへの帰還」(モイラのもとに帰る)である。ホラー映画としてどうかは別として、普通に怖めのドラマとして見れば悪くない。

物語としては、主人公が16歳の頃と現在(多分60歳)の場面が交代しながら進み、最後に統合されていく結末になる。東洋的感覚からすれば還暦ということもあり、主人公はここで人生を見返すべき時期が来ていたのではと思わされる。結果的には人生の清算にまで至ってしまったが、本人の因果で落ち着くところに落ち着いたと思えば、これはこれでよかったのではという気もした。
また魔女かと思われていた人物は、確かに薬草や薬瓶で魔女の雰囲気が出ているが、衣服では白の印象が強調されている。魔女に付き物とされるネコにしても、魔女なら黒ネコのはずが白ネコだったので魔性のネコともいえない。仮に魔女としてもいわゆる白魔女かと思ったが、その後の惨劇により黒魔女化してしまったということはあるかも知れない。
一方で売春営業をしていた場面はなかったようで、主人公は嫉妬のあまり裏切ってしまったが、結末を見ればその時点で少年以外の相手はいなかったのだと思われる。最後は黒魔女の怨念で主人公が死んだように見えたが、あるいはまだ白魔女だった頃に少年の一途な思いに応えようとして、死んでも一緒と予言したのが現実化しただけのようでもあった。
なおこの映画の製作時期にはまだ白=正、黒=邪という感覚が一般的だったろうが、その感覚でいえば序盤で魔女が白い衣服だったのに対し、押しかけた教団連中が黒衣だったのは正邪が逆転したかのような印象があった。白ネコも最後は人と同じく黒焦げにされたのが哀れなことで、まるで邪悪な宗教が無辜の人獣を黒く変えたかのようだった。

ところで終盤の出来事はいわゆる魔女狩りのようで、さすがに20世紀に魔女狩りの名目でやったとも思えないが、宗教的権威を背景にしたとすれば魔女狩り同然ともいえる。これを見ていると前近代の魔女狩りも、私怨で訴えられた人物を寄ってたかって魔女に仕立て上げるようなものだったかと想像させられる。なお字幕に「母親の群れ」とあったのは面白い(皮肉な)表現だった。
この魔女狩りの場面で、死体を見ていた連中の中にいたいけな少女が混じっていたのは少し驚かされた。こんな無惨な死体を子どもに見せていいのかと思ったが、これは人間ではなく悪魔の一種であるから見せても差し支えなく、かえって教育的にふさわしい、と大人が考えたとすれば恐ろしいことである。こういうところにこのドラマとしての皮肉が込められていたかも知れない。
かっぱ堰さん [DVD(字幕)] 6点(2025-02-15 19:31:31)《新規》
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投稿日付邦題コメント平均点
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