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《ネタバレ》 南米ベネズエラで起きている深刻な難民問題について、世界に向けて告発しようとする映画である。この映画では500万人としているが、日本の外務省公式ページでも「これまでに約450万人のベネズエラ国民が近隣諸国(特にコロンビア,ペルー,チリ等)に流出」と書かれている(2020/6/6閲覧)。終盤のインタビュー場面では本物の難民の映像も使っていたように見えた。
その原因は、要は現政権の失政だと言いたいらしい(ハイパーインフレの影響が大きいとのこと)。冒頭で見えた「MADURO DICTADOR」という落書きは、現在も同国にいるマドゥーロ大統領(日本政府は支持していない)を独裁者として非難する言葉である。中盤のTV報道のテロップでは閣僚とともにいち早く国外へ逃げたことになっていたが、終盤でもまた「現政権の姿勢」に触れて、製作側の問題意識がどこにあるかを明瞭にしていた。劇中発生していた停電も現実の反映だったのかも知れない。 これは本物の国際的な大問題であり、単に権力者を揶揄して面白がるだけの映画にはなっていない。ちなみに劇中のWHOはまともな働きをしていたが、なぜか東アジアの強権国家らしきものの影も見えた(医師宅に掛け軸もあった)。次の事務局長がベネズエラから出たりすることもあるかどうか。 そのような背景がありながらも、この映画では難民の発生原因をゾンビに置き換えたことで、見た目はゾンビ映画になっている。またウイルス性ゾンビのため感染症映画としての性格もある(原題と英題もそうなっている)。 最初は断片的な事件を並べておき、ラジオ放送で少し緊迫感を煽ったと思ったら、いきなり次の場面で周囲がいわゆる阿鼻叫喚の巷と化していたのは驚きがあった。また当初、政権側が反政府勢力のせいにしていたらしいのは笑った。その後はロードムービー的にゾンビとの戦いが展開し、結末がどうなるか途中で気づく場合もあるかも知れないが、その通りになるので安心してもいい。 映像面では、邦題と違って都市的景観はわずかだが、地方の風景がけっこう印象的に撮れている。農村部での山脈の鳥瞰的な撮り方が、序盤の首都の空撮と似ていたのは意味不明だが面白かった。またエンドクレジットの背景で、南米イメージのアート調にアレンジした劇中場面の再現映像は個人的に好きだ。 以上のようなことで、どうせ軽薄なゾンビ映画だろうと思ったら全く違っていた。ちなみにいまこのご時世では、ラスト近くの「そのために国境がある」という言葉に非常に共感した…すぐ後で否定されていたが、要は主人公の義母と同じになってもいいのかということである。 【かっぱ堰】さん [インターネット(字幕)] 7点(2020-06-06 10:27:41)
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