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《ネタバレ》 2008年のコソボ共和国独立宣言の時点で、独立された側のセルビア共和国にいた若者を主人公にした映画である。公式サイトのコメントでは、当時「欧米のリベラル派を中心とした文化人によるセルビア人に対するヘイトクライムが確かに存在」し、「セルビアが世界の孤児にされていた」と書いてあるが、この映画自体にそういう説明はないので背景事情ということである。
原題Varvari(Barbarians)に関しては、この映画では地元サッカーチームのサポーターの呼び名がこれだったようで、そうすると主人公を含むこの連中が野蛮人ということになる。一方で冒頭に出ていた文章は、近代の詩人による「野蛮人を待つ」という詩の一部とのことで、これは為政者が外敵の存在に頼って内政を疎かにすることを表現したものらしい。この映画でいえばセルビア政府がコソボ問題により国民の目を内政から逸らそうとしているという意味になるか。 この当時、政府が国民に独立反対デモへの参加を呼びかけたのが事実とすれば、単に国内の不満を逸らすだけでなく普通に対外アピールの意味もあったのではと思うが、それでも結局はサポーター連中が暴動を起こすのと同じ結果になるようだった。主人公の仲間などはデモに参加する気もなくいきなり掠奪を始めていたが、それが当時現地にいた監督の目に見えた実態だったと思っておく。 主人公のドラマとしては、自分が見た限りでは社会がどうこういうより主人公の個人レベルの問題にしか見えない。邦題では「若きまなざし」などと書いて美化しているが、個人的には特に共感できるものはなかった。荒れてますねと言うしかない。 ただ不満のはけ口を方々に求めても徹底せず、解消の手がかりもないのはやはり社会の問題と解すべきか。公式サイトによれば出演者は現地の不良少年から選んだそうだが、主人公役と友人役はこの映画に出た後で映像・演技の道に進んだとのことで、少なくとも配給側としてはそういうことに希望を見出したいようだった。 なお人種差別された黒人選手はわりといい奴だったようで、主人公よりよほど円満な家庭だったらしい。どこの国の出身か不明だが、一応平和で安定的な社会に生まれ育ったようではある。 追記:他のレビューサイトに、主人公の人物像と現実のセルビアに関する非常にいい解釈があってなるほどと思った。人々も国々もVarvariだらけだが、袋叩きにされてもとりあえず前を向いていようという意味だったか。 【かっぱ堰】さん [DVD(字幕)] 5点(2024-10-19 20:33:04)
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