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お涙頂戴物語なんだと勝手に決めつけていて、今まで本作を手に取ることはありませんでした。録画されていたので落ち着いて鑑賞してみたと、意外にも淡々と現実を見せ切る正直路線だったので少々驚きました。トム・ハンクスは沢山の主演男優賞を受賞していますので、一般的にはトムハンクス・アプローチは正しいと思いますが、私は彼の過剰表現が嫌いです。しかし本作の彼はそんなに悪くはなかったです。
アメリカという国において、独立宣言が発せられたフィラデルフィアで偏見や差別が行われているのが皮肉として面白いといわれていますが、ソレとコレは別の話のような気がします。そもそも、主人公アンドリュー・ベケット(トム・ハンクス)は大会社の上層部に食い込みたいという野心と情熱があった割に、自身が蝕まれているエイズという特殊な病気のことをあまりにも軽んじていたように思います。彼が考える基本的人権と平等を得たいという感覚や気持ちは理解できるものの、法律に詳しいアンドリューでしたらこの映画のような流れは必然だったように感じます。訴訟大国アメリカにおいて、ゲイであることとエイズ発症を隠して大手法務部に食い込むのはあまりにもリスキー過ぎる行動だったといわざるを得ません。 しかし本作において法廷部分はあまり重要ではないのか、、法廷論争はウマく流れていません。見ている側、特に私に限ってはほとんど中身が入ってきませんでした。アンドリューの痛々しい風体ばかりが目に入って話し合っている中身が入ってきません。他の方がご指摘のように、アンドリューを助ける弁護士ミラー(デンゼル・ワシントン)もイマイチ空気と化してしまっていて、うまく鑑賞者の立場になっているようには思えませんでした。法廷部分に関しては連続ドラマ、アリー・マイ・ラブのほうがずっとドラマチックで面白かったように感じます。 鑑賞後、日を開けてレビューを書こうとするとあまり得るものが無かったように感じます。しいて挙げれば、、この当時はまだまだ世の中は偏見と欺瞞に満ちていて、エイズと聞けば同性愛、不潔、近づくとうつる、感染したら死ぬ等、未知のウィルスに対して偏見の塊で見られていました。現代、体液を介さないと感染しないと判っていても、やはり一緒に食事をするには緊張してしまいます。悲しいかな、ウィルス性の病気にはそういった怖さがずっと付きまといます。 長くなりましたが、ジョナサン・デミ監督が意図したように「独立宣言と差別」「ゲイ問題」など色々絡めてある割にはそれぞれがバラバラに独り歩きしているような映画でした。本作で名シーンの一つに挙がるであろう、マリア・カラスの「ラ・ママ・モルタ」のシーンもくど過ぎて見ていて嫌になりそうでした。。ただ、オープニング曲のスプリングスティーン「ストリート・オブ・フィラデルフィア」と、エンディング曲のニール・ヤング「フィラデルフィア」はそれぞれ名曲だと思います。 【アラジン2014】さん [インターネット(字幕)] 6点(2025-01-26 16:28:51)
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