グリーンブック の ゆき さんのクチコミ・感想

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グリーンブック の ゆき さんのクチコミ・感想
作品情報
タイトル名 グリーンブック
製作国
上映時間130分
劇場公開日 2019-03-01
ジャンルドラマ,コメディ,実話もの,音楽もの,ロードムービー
レビュー情報
《ネタバレ》  ピーター・ファレリー監督が、こんな真面目な映画を撮ったのかぁ……と、その事に吃驚。

 「白人」「黒人」「差別」といった属性を備えた品なんだけど、単純に「白人が黒人を救う物語」って訳でもないのが面白いですね。
 主人公のトニーは白人だけどイタリア系であり、劇中にて「イタ公」と差別される側でもあるんです。
 そもそも黒人のドクはトニーの雇い主であり、困窮してたトニーを雇って救ってあげた側という大前提があるんだから、非常にバランスが良い。
 史実では単なる雇用関係に過ぎなかった二人を、無二の親友になったかのように描く事への批判もあるようですが……
 映画の観客に過ぎない自分としては、この両者のキャラ設定は絶妙だったと思います。

 その他にも「二人が旅立つまでが長い」とか「ドクが同性愛者であるという要素は、あまり活かせてない」とか、欠点らしき物も幾つか思い浮かぶんだけど「主人公であるトニーの境遇を説明する為には、止むを得ない」「実話ネタなんだから、同性愛者と示しておく必要があった」と、ちゃんと疑問に対する答えは見つかる為、さほど気になりませんでしたね。
 むしろ、他のファレリー監督作の映画と比べても欠点は少ない方だと思うし、非常に出来の良い、優等生的な映画だと感じました。

 そんな本作の中でも特に好きなのは、トニーが初めてドクのピアノ演奏を聴いて、虜になる場面。
 実際に演奏が見事だったから、観客の自分としてもトニーの感動とシンクロ出来たし、その後すぐドク当人に「感動したよ」って伝えたりする訳ではなく、家族への手紙で「ドクは天才だ」と絶賛してるという、その遠回しな表現が、また心地良いんですよね。
 そういった積み重ねがあるからこそ、本人に直接「アンタのピアノは凄ぇんだよ、アンタにしか弾けない」とトニーが訴える場面も、より感動的に響くという形。

 他にも、コンサートスタッフに「クロなら、どんなピアノでも弾ける」と言われ、トニーが激昂する場面。
 運転中、二人で音楽談義する場面。
 ドクが初めてフライドチキンを食べて、二人で笑顔になる場面も素晴らしいし、二人が親友になるまでが、非常に丁寧に、説得力を持って描かれていたと思います。

 脚本や演出の上手さという意味では「拳銃」の使い方も、本当に見事。
 「銃を持ってるというハッタリ」の伏線が「本当に銃を持ってる」という形で回収される鮮やかさときたら、もう脱帽するしかないです。
 この拳銃の発砲シーンって「酒場で札束を見せたがゆえに、ドクが殺されてしまうバッドエンド」を予感させておき、そんな悲劇を銃声で吹き飛ばす形にもなってるのが、実に痛快なんですよね。
 ともすれば一方的な「黒人って可哀想」映画になりかねない中で、ドクを襲おうとした黒人達って場面を挟む事により「黒人は常に被害者という訳ではなく、加害者とも成り得る」と示す効果まであるんだから、二重三重に意味のある、忘れ難い名場面です。

 それはその後の、親切な警官に助けてもらう場面も、また然り。
 「南部にも良い人はいる」「警官にも良い人はいる」という、当たり前の事を当たり前に描いてくれる配慮が、本作を万人が楽しめる傑作たらしめていると感じました。

 本来ドクにとっては屈辱なはずの「黒人が白人の為に車を運転する」という行いで、トニーを助けてあげる終盤の展開も良かったし……
 最後に、トニーの妻には「手紙」の秘密がバレていたと示す終わり方も、非常に御洒落でしたね。
 それまで出番は少なめだった「トニーの妻」というキャラクターが「素敵な手紙をありがとう」という一言により、一気に魅力的になったんだから凄い。

 良質な脚本と、良質な演出を味わえる好例として、映画好きな人だけでなく、映画作りをする人達にも、是非観て欲しいって思えるような……
 そんな、素敵な一本でありました。 
ゆきさん [ブルーレイ(吹替)] 8点(2024-02-17 13:21:33)(良:2票)
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