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《ネタバレ》 ほんとに面白い映画だな、と毎回見るたびにつくづく感心してしまう。
間違って誘拐された子供を助けるべきかの心理的葛藤、現金を詰めたかばんを持って特急こだまに乗れ、7cm開く洗面所の窓…。 冒頭から息詰まる展開の連続、後半で犯人が割れてからは警察の狂気さえ感ずるような執念の捜査、モノクロ画面に浮かぶ唯一のカラー。 名場面・名演出のオンパレードだ。誘拐罪の刑の軽さに対する黒澤の怒りが本作の大きなテーマだというが、それが映画全編を通じて伝わってくる。 皮肉なのは、名声名誉の象徴である高台の住人を憎悪して犯行に及んだ犯人だが、その被害者である大富豪権藤も、かつては貧しい靴屋であり、高圧的ではあっても仕事には熱心で、善良な男であったことだ。 要は犯人は、自分と似たような境遇にあった人間に対して罪を働いてしまい、もっといえば、未来の自分がなりうるだろう立場の人間に罪を働いたともいえる。 犯人は医師の資格もあり、それなりの教養もあったのだろうから、高台に対する屈折した憎悪など抱かずに、善良さを持ち、仕事には熱心に励んでいればよかったのに・・・。そう思わずにはいられなかった。 黒澤映画が偉大なのは、娯楽性が十二分にありながら、こうした人間性や善良さについて深く考えさせてくれるところだ。 【nakashi】さん [DVD(邦画)] 10点(2018-08-18 15:19:45)
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