ジョジョ・ラビット の nakashi さんのクチコミ・感想

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ジョジョ・ラビット の nakashi さんのクチコミ・感想
作品情報
タイトル名 ジョジョ・ラビット
製作国
上映時間109分
劇場公開日 2020-01-17
ジャンルドラマ,コメディ,戦争もの,小説の映画化
レビュー情報
《ネタバレ》 ユーモアとシリアスを巧みに織り交ぜた、素敵な寓話的映画だった。子役たちのキュートな演技もさることながら、美人で肝っ玉なお母さんを演じたスカーレット・ヨハンソンの好演が光る。少年と母親との愛情あふれる、ユーモラスなやり取りを経た上での(だが一方で母親は息子のナチスへの熱狂ぶりを警戒しているというのがいい塩梅になっている)、後半の靴のシーンは大変衝撃的で、まさに肺腑を抉られるようだった。ぶら下がる母親の足に縋りながら、涙する少年の悲壮な表情は痛ましく、涙が出そうになった。

少年と年上の少女との交流も微笑ましい。感受性が強く、純粋ゆえに残酷でもある少年が、少女との交流でそれまでの偏見を捨て去っていく過程は印象的だ。特にゲシュタポが憎悪と偏見に溢れた少年の日記を朗読したときの、少年と少女の視線のやり取りが秀逸。ゲシュタポの醜悪な笑い声、かすかに涙ぐむ少女、少年の痛切なまなざし。少年はここにおいて、自分の行いがいかに少女を傷つけたのかを知ったはずだ。少女の身元が割れてしまうかもしれないという緊迫感ある場面だが、同時に少年の残酷な仕打ちが明らかになって、少年が反省と成長を見せるという、非常に高度な展開がここではなされている。

完成度の高い本作だが、ケチをつけるとしたら、主に二点。他の方も指摘されているが、BGMの使い方がややあざといところがある。I wanna hold your handのドイツ語ver、ラストのデイビッドボウイ(しかもベルリン三部作からの選曲)など、選曲があまりに安直過ぎるのはいかがなものか。また、重要なシーンや戦争の悲惨さを感じさせるシーンではお決まりのように映像がスローになり、マイナー調のバラードを流す演出も一本調子でどうかとは思う。ここも音楽の使い方があざといと感じた。

さらに違和感を感じたのが、ヒトラーの細かい描写だ。少年の妄想だから、どれだけ奇天烈でも荒唐無稽でもいいとは思うのだが、この時代のヒトラーは喫煙をしないはずだ(むしろ嫌煙家であり、周囲に禁煙を勧めていた)。本作は寓話的ストーリーなので、リアリティは二の次というのは理解できる。ただ、悲惨な時代を背景に、ナチスの蛮行を描いた作品であるからこそ、悪役を担う存在にも丁寧な考証に基づく描写があってもよかったのではないか。

全体的には伏線が非常に巧みに張られた映画で、ユーモラスな世界観に、過酷な時代情勢を盛り込み、伏線も素晴らしい、という傑作と呼ぶべき作品だった。
nakashiさん [ブルーレイ(字幕)] 8点(2020-07-06 10:46:59)
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