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《ネタバレ》 “Psycho”『精神病質者』。'60年の日本で“サイコ”って言葉がどれだけ通じたか知らないけれど、原題をそのまま使うとは思い切った決断だったと思います。憶測だけど、この映画の影響で“サイコ”という言葉が日本で浸透したんじゃないでしょうか?
私が小さい頃、テレビで放送される映画はカラー作品ばかりで、これだけ有名な作品でも放送されることはなく、高校に入ってから、レンタルで観たんだと思います。でも観る前からテレビの『ホラー映画特集』とかで、この映画のハイライトシーンは観ていました。 サイコのハイライトといえば『女の悲鳴』シーンと『母親登場』シーン。 DVD特典の当時の予告編から『シャワー中に女性が悲鳴を上げる』シーンがあることは、当時の観客も知っていたと思います。 だけど有名な『母親登場』は、御存知の通りこの映画の最高機密となっていて、きっとリアルタイムで観た人は、意外な犯人に驚いたことでしょう。物言えぬ母親の画。女装したノーマン。最後の精神科医の説明が、一般人の疑問の隙間を埋めてくれます。そしてリアルな母親の死体のショックからクールダウンする時間を与えてくれます。素晴らしい。 映画を観る前から結末を知っている私が、この映画で驚いたのは、序盤からノーマンではなくマリオンが主役で、彼女の突発的な犯罪を、映画のおよそ半分を使って、しっかり追いかけたことです。こんな映画だったなんて知りませんでした。 だけどクライム・サスペンスだとしたら、マリオンの犯罪はあまりに愚図愚図です。具合が悪いと会社を早退したのに路上で会った社長に笑顔。仮眠のつもりが寝過ごして警官に起こされる。逃走の車を買い替えるところをその警官に見られ、試乗もしないで700$もの大金をキャッシュで出す。宿帳に偽名で書いたのに、うっかり実名を伝えてしまう。成功の見込み無しの犯罪。 私にとって予想外だったクライム・サスペンスは、有名な『女の悲鳴』を境に主役が入れ替わり、殺人映画に。そして当時の人にとって予想外だったであろう、サイコ・スリラーに様変わりします。 つまりこの映画の本当に凄いところは、『母親登場』の最後ではなく、その最後に至るまでの過程の方にあるのでしょう。愚図愚図なマリオンの犯行と、4万$の行方にヒヤヒヤし、今度は異常な母親の犯行を隠すノーマンの気持ちになって、マリオンの死がバレないかとハラハラします。だからこその、そして最後は…。になるんですね。 沼から引き上げられる車のトランクには、序盤のキーアイテムの4万$と、後半のキーアイテムのマリオンの死体が一緒に入っています。そのトランクのアップで終わるのもまた、一本の映画としてのパッケージングの上手さ爆発です。 【K&K】さん [ビデオ(字幕)] 9点(2023-07-04 22:21:03)
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