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《ネタバレ》 これもまた凄い映画です。今までの伊丹監督の映画にもヤクザは出てきましたが、本作は伊丹版ヤクザ映画でしょうか?
昭和の時代、芸能界とヤクザは切っても切れない関係だったと聞きます。だからかどうか解りませんが、ヤクザ映画は邦画の一大ジャンルを占め、そこに登場するヤクザは、入れ墨してて怖いんだけど、男気があってカッコイイ主人公が多いんですよね。ある意味、ヤクザのイメージアップに貢献していたんじゃないでしょうか。鶴田浩二や高倉健、菅原文太に憧れて、その道に足を踏み込んだ若者も、少なくなかったことでしょう。 一方、本作のヤクザは弱いものから金を巻き上げる、怖くて悪いだけのヤクザです。しかも人を騙し、弱みを握って、罠に嵌めて、恫喝して金を巻き上げる、手口も汚いし、お世辞にもカッコイイとは思えないヤクザです。ヤクザ映画と伊丹映画。実際に私達の周りにいるヤクザって、どっちなんでしょうかね? 怖いヤクザの化けの皮を一枚一枚剥がし、恫喝は出来ても、そう簡単に暴力は振るえないヤクザの実態を丸裸にしてみせます。映画を観る私達も、セキュリティ対策の鈴木と若杉のように、まひるから対策を学び、「もうヤクザなんて怖くない!」とまで思わせる力量は見事です。集団でホテルに来たヤクザの一団を、鈴木がホテルマンたちの先頭に立って、涼しい顔で撃退するシーンは本当にスカッとします。 伊丹監督が、ヤクザを敵に回す覚悟があって本作を制作したのかは疑問です。脱税、宗教団体&地上げ屋ときて、今度はヤクザの実態を暴くハウトゥを映画にしてみようか…。なんて具合に、単に娯楽としてスタートした可能性は否定できないですよね。 前作『あげまん』が思いのほか公開後の評判が良くなかったためか、本作は伊丹監督らしいスタンダードな仕上がりとなっています。 ただ当時は、こんなにクオリティ高いのに、マルサと同じようなジャンルが続いてしまい、“伊丹監督ってこういうのしか面白く撮れないのかな”なんて、マンネリ感を感じてしまっていたように思います。今思うと贅沢な考えですよね。 公開直後の伊丹監督襲撃事件は、却って監督を本気にさせてしまったのかもしれません。いわば襲撃も、映画を見た観客のレスポンスの一つ。自分が暴こうとした真相に近づいた証拠!くらいに思っていたのかな?なんて。 今となっては真相は解りませんが、映画業界が持ち上げたヤクザのイメージを、地の底に突き落とす力を持った映画なのは、間違いありません。 【K&K】さん [地上波(邦画)] 8点(2024-06-18 22:18:56)(良:1票)
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