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「パブリック・アクセス」とは、ケーブルテレビなどのメディアを利用して、地域社会の問題点を提起し解決することを目的に、一般市民が制作した番組を放送する制度のことで、アメリカなどで広く普及しているそうだ。本作を見れば、そのシステムがよく理解できる。大規模なテレビメディア網の一方通行かつ膨大な情報の流れは権力的と揶揄されたりするが、その情報伝達手段の一部を市民に開放しようという、実に民主的な発想に基づいているものだ…が、本作は、この草の根民主主義を媒介に、平和な町をあっという間に蝕んでしまう一匹な悪性ウイルスの恐怖を描いている。この映画についてのいくつかの批評を見ると、主人公はあちこちの町を渡り歩いては同じようなことを繰り返している愉快犯ではないかとの意見があって、ナルホド、それはそれでかなり怖いなぁと思ったが、私の意見は、主人公の正体は市長(の面を被った金の亡者)に雇われた監視人(というか殺し屋?)ではないか、と。市長の裏計画を妨害する人物を割り出し始末するための「パブリック・アクセス」だったのではないだろうか。そう考えると、市民主体の平和的活動が巨大組織の非情な情報収集活動に転化してゆく恐ろしさが浮かび上がってくる。番組の最終回(?)に出演した市長の「彼は信用できるから…」というセリフがけっこう怪しい…。ともあれ、この作品のテーマを凝縮しているのが、ラストで主人公が自転車に乗った子供に語りかける、「知らない人に声をかけられてもついていっちゃダメだよ」というセリフ…知らない男の呼び掛けに反応してしまった町が荒廃していった様をここでフラッシュバックせずにはいられないだろう。作品の評価としては、主人公の性格の意図された曖昧さと、これに対比される町の人々の輪郭がこれまた曖昧なため、全体的にぼやけてしまった印象がぬぐえない。それにしても、トンネルの殺人現場のシーンは何の伏線だったのか、分からないのだが…?
【しっと】さん 5点(2002-12-15 05:34:31)
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