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夫への愛情があまりに強すぎた為、彼女は夫の失踪(死)を受け入れることが出来ず、あたかも実在するかのように彼のまぼろしを見るようになる。マリーが新しい恋人に対して「あなたは軽すぎるの!」このセリフの重みが如何に大切であるか。失踪した夫が巨漢であったことから当然物理的な重さもそうですが、あまりに彼女が夫の存在を消し去ることができない心理的重さが彼女にのしかかる。心理的なグロテスクを表現するフランソワ・オゾンの力量がここでも十分かいま見えます。夫の外見的な力強さとは裏腹に内面的なもろさ。妻の夫への執着と解脱。日常的な風景で様々な比喩を盛り込み、残酷なセリフにぶちのめされ、そして全てをも包み込む海の美しさに感動する。ラストでやっと夫の死を受け入れ始め泣き崩れる妻に再度夫の幻覚が見え、彼女はそこに向かって嬉しそうに疾走していく。一見、再度幻覚を見るという救いの無いエンディングですが、観ている側はその砂浜のシーンを次第に彼女が新たに生まれ変わったかのように昇華して見える。実に感動的で不思議なシーン。ホント、フランソワ・オゾンってすごい監督です。当然シャーロット・ランプリングの美しい狂気は彼女無くしては成り立たないでしょう。狂気とは書いてますが彼女が演じるとそれが恐ろしい狂気というモノではなく、幸せですら見えます。先程述べたラストシーンは良く見ると夫として写っていた男の影を追い越しているように見えました。(遠近感的に...)実は彼女はその男の向こうに夫の姿(画面上は写っていない)を見たのかも知れませんね。深読みしすぎ??
【さかQ】さん 7点(2002-11-17 22:03:40)(良:2票)
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