1.原作は芥川賞にノミネートされた女子大生(深井迪子って人)の小説だそうで、つまり“女の太陽族もの”ってとこで中平にまわってきたのかも知れない。だから映画としてもわざと青臭さを残しているのかも。北原三枝がアップで「いくじなし」と叫んで海に走り、カメラは横に這いつつ波打ち寄せるストップモーション、となかなかいい導入。長回しが多く、北原と三橋達也が外で話し合ってて(街灯の脇で待ち伏せてる北原のカットも美しい)緊張が高まり、と二人の間のシグナルが矢印光らせて点滅し、列車が通過していく。こういうのはワンカットでないとずいぶん気が抜けてしまうものだ。ラスト近く、北原がベッドの向こうの床に横たわり、津川雅彦が右側に立っているのを、ベッド越しに捉えた構図。嵐の接近でカーテンが揺らぎ、書類が一枚一枚散っていく。こぼれたビールに点滅するネオン。話はつまらないが、当時の“クール”へ憧れる気分が横溢していた。爪を噛む少年は、もしや未来の唐十郎ですか?