2.《ネタバレ》 結末について考えさせられる作品。かなりの低予算の中で製作されたようですが、美しい映像と深みのある脚本に惹き付けられました。
幽霊視点の作品というのは決して珍しいものではないと思いますが、多くは死者が生者を見つめる物語。この作品は、そうではなくて死者が自分自身を見つめる(流れの)作品です。自らの死について考え、そこから見出した答えによって未来(死後の世界があってこその未来ですが)を導き出す物語ですね。
霊媒の語り掛けによって自らの死の真相とそこに至るまでの悲しい記憶をたどるヒロイン。彼女はそれによって救われる筈だった。しかし、結末はより悲しいものになってしまったようです。
彼女の別人格(あるいは彼女に憑りついていたもの)は救われ、主人格である筈の彼女は闇に飲み込まれて行く。悲しく救いのない結末と捉えるべきなのか、それとも別人格である筈の狂暴性を秘めているかのような男が、実は主人格(あるいは憑りつかれていた者)であって救われたと捉えるべきなのか、短めの尺の中で深みのある物語となっていると思います。
冒頭紹介されるエミリー・ディキンソンの詩「霊は墓や家だけでなく人の心にもとり憑く」。随分な意訳に思えますが、この翻訳がこの作品のテーマを言い得ているのですね。彼女について深くは知らないのですが、ヒロインの名前と言い、この作品の根底に流れているのは彼女の詩の世界なのでしょう。
何となく鑑賞した作品ですが、想像以上の佳作に出逢えました。