5.《ネタバレ》 「偉大な生涯の物語」は、3時間47分。キリストの生涯を描く時間としては、長いのか短いのかなどと考え始めたら、きりがありません。
映画というものは、いったん引き込まれてしまったら、時間の経つのなんて、すっかり忘れてしまうものです。
退屈な映画は、長く感じ、面白い映画は、短く感じるということですね。とにかく、素晴らしい3時間47分でした。
これだから、映画を観るのはやめられません。
キリストを演じているのは、スウェーデン出身のマックス・フォン・シドーで、ベルイマンの映画でお馴染みの名優ですね。
最初に登場した時に、髪の毛が短いので、だんだん伸びて肩に付くくらいになるのかなと期待していたら、十字架上で息絶えるまで、ずっと同じ髪形のままでした。こういう、すっきりしたキリストもいたんだなと、妙に感心しましたね。
この映画の土台となっているのは、聖書です。むろん、他のキリスト映画も、土台は聖書に決まっているのですが、この映画の場合、聖書へのこだわりを強く感じました。
聖書に出てくる使徒や、キリストの言葉が多くセリフになっており、説明的な台詞はあまりありません。
聖書に登場しないシーンもほとんどありません。
そして、それぞれのシークエンスは、まるで絵画を見ているように美しく、抒情的で詩的です。
映画を観ているというよりは、詩のナレーションの付いた、動く絵を見ているような感じがしました。実に美しい映画です。
それと、この映画で目を引いたのは、意外な俳優が出演していることです。なんと、西部劇の大スターのジョン・ウェイン。
ジョン・ウェインのコスプレ姿を観られるのかと、目を皿のようにして出番を待っていました。
ジョン・ウェインの声は、一度聞いたら忘れられないくらい独特ですから、声ですぐに彼だとわかったのですが、画面に登場したのは、ほんの数秒間で、顔のアップすらありません。
これには驚くやら、悲しいやら。きっと、無理やり出演を依頼されて、付き合いで出演したのかもしれません。
シドニー・ポワチエも少しだけ出演しています。こちらは、ジョン・ウェインより、出演場面は長いし、おいしい役です。
キリストを助けて、一緒に十字架を担ぐシモンです。
チャールトン・ヘストンは、予言者ヨハネの役で、この時期、コスプレ物の歴史映画に出まくっていた彼の貫禄を感じましたね。
あと、人気TVドラマ「ナポレオン・ソロ」のイリヤ・クリヤキン役で日本でも人気の高かったデヴィッド・マッカラムが、裏切り者のユダの役を演じていました。
冷たい感じの表情が、ユダに合っているように思えました。
何度も映画化されているストーリーの映画を見比べるのは、本当に興味深いです。まだまだキリスト映画は、他にもあるので、今後とも見比べていきたいと思っています。