48.《ネタバレ》 東西冷戦の中、東欧で起こった自由獲得への試みは、プラハの春の悲劇のようにソ連の力により封じ込められました。そのチェコから亡命したフォアマン監督の自由に対する特別な気持ちが作り出した傑作です。秩序ある組織としての病院は、ある日、突然のマクマーフィーの出現により、患者たちの押さえられていた欲望や、忘れていた感情が次々と刺激されていきます。それは、患者たちの人間性のめざめとも言えるものですが、しかし、同時に病院の秩序を乱すことにもつながっていきます。そして、度を過ぎる騒ぎに悲劇も起こり、異端児は消し去られます。自由とは、各人がそれぞれの価値観で発言し行動することであり、対立や秩序の乱れは当然の結果なのかもしれません。したがって、組織や体制の維持を優先すれば、自由を制限しなければならないことも当然なのでしょう。最後は、自我に目覚めたチーフだけが、病院を去っていきます。その姿は、まさに自由のない祖国を捨てたフォアマン監督そのものと言えるのかもしれません。 【パセリセージ】さん 10点(2004-02-05 00:32:55) (良:3票) |
47.この映画に出会ったとき、私は管理社会に対して大きな疑問を感じていた時期であった。 国家であれ、企業であれ、学校であれ、管理なくして秩序は保たれない。 その必要性を理解し納得しているはずなのだが、何か合点がいかない現実が周りにあった。 企業、学校など、いろいろな組織体系の中で、正しいとされている規律が、決して社会全体から見ると正しいことではなかったりする。 ところが、多くの人々は、自分が置かれている環境でしか通用しない「正しいこと」について、問題意識すら持たない。 そんな、釈然としない実体験が、この映画の中で展開する世界にオーバーラップしたのである。 病院側の、人間性を無視した管理。患者達の、現状に甘んじる消極的な態度。 まるで、現実社会の縮図を見ているような気がした。 冷酷なまでに患者を支配するラチェッド婦長。彼女の心無い一言が、患者ビリーを自殺に追いやった。 憎むべき対象以外の何者でもない。許せるわけがない。 私もマクマーフィ同様、反旗を翻し管理側に立ち向かったことがあった。 チーフのような力強い協力者も現れたが、権力と個人の力の差は大きく、結果は敗退。 組織から排除されたのも、この映画同様である。 ロボトミーを受けずに済んだのは幸運ではあるが。 しかし、二十数年間この映画を観続けてきた今、私は他人を管理する立場にある。 組織運営の為、規則により一人一人の自由を剥奪している。 その結果、管理を厳しくすればするほど、組織の秩序が保たれることを実感している。 ラチェッド婦長こそ、管理の教科書ではないかとも思えてきている。 立場によって「正しいこと」も変わってくる、いや、もともとそんなものは無いのかもしれない。 そして、考える。きっと、秩序を優先させた最たるものは全体主義であり、人権を無視した独裁国家に行き着くのであろう。 自由ばかりを優先させ秩序が崩壊した社会は、それぞれが勝手な行動に走り、安全な生活とは程遠い無法地帯と化すに違いない。 この映画は、私達に何を伝えようとしているのだろうか。 「全体の秩序と個々の自由。二つの反比例する相関関係こそが"人間の愚かさ"の証しであり、 二つを両立させようとする努力こそが"人間の素晴らしさ"の証しである」と、語りかけているように、私は感じるのである。 【Gang10】さん 10点(2004-02-03 09:42:34) (良:2票) |
46.《ネタバレ》 テーバーがポイントだね! 【k】さん 10点(2004-01-30 10:59:33) (笑:1票) |
45.素晴らしいレビューの後なので気が引けるが...。精神病者もマクマーフィも規定の枠に収まりきらないアウトローとして,同じように差別され同じ扱いを受けるのを見てショックを受けた。もちろん,その酷さそのものにもショックを受けたのだが,もっとショックだったのは,自分が「人間らしい」マクマーフィをこのような酷い目にあわせるなんて!といつの間にか感じていたことだった。よく考えてみれば,ラチェッド婦長が非人間的,マクマーフィが人間的,と切り分けるとき,私は私の「常識」によってそれを行なっている。しかし,その常識が「規定の枠」となり,今日のマクマーフィを檻に閉じ込めないという保証はどこにもないのだから。私にとって,精神病院は自分の感覚や常識といったものの象徴だ。そして,そこから飛び出すチーフの背中を羨ましく見るのである。 |
44.この映画には,「本物」の迫力があります.チェコから西側に亡命したミロス・フォアマン監督は,ベタベタなまでに自分の人生を作品に投影させていますね.洗面所の石台の話が作品のキーになっているわけですが,役者達のセリフを通して「俺は挑戦した.命をかけて亡命に挑戦した.」という監督自身の矜持が伝わってきます.ラストが不可解だという意見もあるようですが,私にはすごく分かり易かったです.「殺してあげる」ことも,友情の一つの形でしょう.切腹時の「介錯」に近い行為だと思います. |
43.プログラム化された精神病棟は、メタフォリックな意味での現代社会を表している。精神病患者としてボランタリーに日常を封じ込めた人たちが集う静謐な世界。それは、共同体の失われた現代において、一種の非日常的な日常空間でもあるだろう。<大江健三郎の「他人の足」と同じ世界か。> この世界にトリックスターたる存在として、ジャク・ニコルソン演じるマクマーフィが投げ込まれる。彼は、予測不可能な行動を繰り返すことによって、他の精神病患者たちを戸惑わせると同時に大いに惹きつける、外の世界の魅力をプンプンさせる実に人間くさいキャラクターなのだ。この作品の主人公は、精神病棟そのものである。マクマーフィのある種のヒューマニズムによって掻き乱される閉鎖世界。世界は風穴をあけられ、人々はこころを取り戻すかと思われた、が、最終的にマクマーフィの人間性が剥奪されることにより、世界は元の閉鎖状態に戻ってしまう、ように見える。しかし、ここに到って内部の人間チーフの選択が浮かび上がってくるのである。<ある意味でこのチーフこそ、本来的な主人公ではないかとも感じる> チーフは、既に人間性を奪われたマクマーフィの息を止めることによって、彼の幻影を消失させ、世界から跳び出すことを選ぶ。そして、それ以外の者たちは、そのチーフの姿に改めてマクマーフィの幻影を追うのである。この映画の印象的なラストシーンは、僕らに突きつけられた「人間としての可能性」に対する問いだと言えるのではないか。僕にはそう感じられた。断絶した世界の中で、”生きていく”可能性とは、一体どういうことなのか? それは、とても切実な問いである。 【onomichi】さん 10点(2004-01-03 23:57:23) (良:3票) |
42.全く飽きさせないストーリー展開に最初から最後まで釘付けでした。ジャック・ニコルソンをはじめ、俳優さんたちの演技が本当に素晴らしい。最高! 【きすけ】さん 10点(2003-12-24 02:24:11) |
41.間違いなく、私が衝撃を感じた映画ベスト3の一つ・・と思っていたが、よくよく振り返るとベスト1、と言いきれると思う。でもこれだけの演技を披露しながら、その後も怪優ぶりをいかんなく発揮しているジャック・ニコルソン、あなたはこの映画以上に、偉大だ!!! 【おばちゃん】さん 10点(2003-12-19 16:25:47) (良:1票) |
40.最高です!ニコルソンを見てるだけでも充分面白い。脇役陣の演技も最高!みんなめっちゃハマってる!!! 【ケンジ】さん 10点(2003-12-14 23:49:11) |
39.《ネタバレ》 あらゆる意味で、その後の私の人生に絶大なる影響を与えた映画。70年代ホラーやパニックブームの中で、娯楽映画の楽しみに浸っていた中学生は、この映画に出会って初めて、世の中にはただ楽しいだけでなく、価値ある映画があることを知る。そして世の中には不条理があること、自分の心で感じ、頭で考えることの自由さ。中学生という多感な年頃にこういう映画に出会ってしまったことはある意味不幸であったような気もするが、とりあえず私はこの後数十年に渡って「正義」という言葉の意味についてクドクドと考え続けることになる。この映画の主人公R.P.マクマーフィは、本当に精神異常者だった「かもしれない」し、あるいは刑務所の強制労働を逃れるために精神異常者を装っていた「かもしれない」。マクマーフィ役を演じたジャック・ニコルソンや監督のミロス・フォアマンも語っているとおり、マクマーフィが精神異常者だったのかどうか、映画は最後まで明らかにしていない。実はそのことがこの映画のテーマなのである。精神異常者である以前にれっきとした犯罪者である彼は、精神病院の「体制」を維持するためにロボトミー手術を受けさせられる。体制の維持は、人間性の剥奪に勝るのか。精神異常であるか、単なる犯罪者であるかという点で、人はその精神の自由を奪われることを判断されて然るべきものなのか。そしてマクマーフィの押し通そうとした「自由」を、異常であると決めつける権利が本当は誰にあるのか。犯罪者であるから抹殺して良い、精神病患者であるから治療しなければならないと考える多数派による「良識」のあり方を、この映画は問題提起の形で描くだけで答えは観客の手にゆだねられている。決して正しくはない主人公の生き方を、異端として排除する多数決社会の価値観は、我々が無意識のうちに選んでいるはずのものであり、それを支えているのが「常識」や「道徳」という名の社会規範である。主人公の行き過ぎた自由を容認するほど社会は優しくはないが、病院側の行過ぎた制裁を支持するには、人々の心は冷たくもない。ただ一方的に自由だけを高らかに歌い上げるのではなく、非常に曖昧かつ必要不可欠な「バランス」そのものに疑問を掲げるこの作品は、多くの人の人生にとって避けて通ることのできないものであると私自身は考えている。 【anemone】さん 10点(2003-12-11 23:18:09) (良:6票) |
|
38.《ネタバレ》 病院にあるのは規律と抑えられた楽しみ。毎日彼等の興奮を抑える薬を投与される。その中で彼等は小さな楽しみを見つけ、彼等自身がその待遇に納得してしまっている。そこにマクマーフィが登場する。病院側にとっては彼は問題児だ。しかし彼は病院にいる仲間達に人間本来の笑い・楽しみ方・自由を教えようとする。最初は戸惑っていた仲間達も次第に彼を好きになり、自分の意見を言えるようになっていく。その豪快でありながら優しい彼の姿を、婦長は羨ましくもあったのではないだろうか。最後に問題を犯したマクマーフィは廃人にされた。もうその姿はマクマーフィではなく、彼の人間としての美しさ・個性が全てなくなってしまっていた。その姿を見たチーフは、最後までマクマフィを1人の自由奔放で心優しい豪快な男でいさせてあげる為に彼を窒息死させる。私には痛いほど気持ちが理解できた。あの廃人はもうマクマーフィではないのだから。。最後にチーフはマクマーフィが計画していたあの『でっかい物』で窓をぶち壊す脱出を選択する。マクマーフィの意思をついだ立派で豪快で友を思いやる友情を込めた脱出法を選んだ彼の姿が最高だ。本当に素晴らしい映画だ。。 【エルビス】さん 10点(2003-11-14 21:28:46) |
37.マクマーフィは、あの状態で生きていたくないだろう。チーフの友情に 感動。そのチーフも病院から逃げ出して、カナダにたどり着いたとして 待っているのは差別と貧困の茨の道であろう。自由とはかくのごとく 厳しいものなのですね。「泥沼の自由か、檻の中の幸福か」の選択で、結局自分を含め、大多数の人は檻の中を選び、日々のつつましい日課 の下に自分の中の獣を押し隠して生きている。観る人皆にマクマーフィ が「おまえはカナダに行くのか、それともここに残るのか」と 問いかけている作品。 【iris】さん 10点(2003-11-13 10:18:44) |
36.何も映ってないテレビの画面に向かってマクマーフィが、野球の実況を始めるところで、いつも泣いてしまいます。名場面です。他のみなさんは? 【ひろみつ】さん 10点(2003-11-05 01:08:11) (良:1票) |
35.《ネタバレ》 私もごく若い頃の一時期、精神的に変調をきたした事があった。その時私は「自分は精神がおかしくなっているフリをしているんだ」と思い込んでいた。それこそがまさにオカシイ証拠なのに。こういった狂人心理を、とてもよく表している映画だ。そしてあのラスト。ここは、見た時のコンディションや年齢によって、まるで違う解釈が出来る。一番最初に見た時は、マックがいい人に思え、看護婦が憎らしく、チーフの行動に深い友情を感じた。二回目に見た時は、自分の職務を全うしようとする看護婦も、かきまわすマックも、自殺してしまったビリーの弱さも、全てが愚かしく、ただ茫洋とした自分を演じ続け(彼の努力とストレスは並大抵ではなかったはずだ!)、虎視眈々と機会を伺っていたチーフだけが得をしたという事に、自分が置かれている社会の縮図を観るようだった。プロットも役者それぞれの演技も、音楽も構図も素晴らしいこの映画を、数年後三回目に観賞して、自分が今度はどんな感想を持つのかが、とても楽しみな映画でもある。 【ともとも】さん 10点(2003-11-01 21:46:02) (良:7票) |
34.《ネタバレ》 <ネタバレアリ>社会の中で、個人はみな、自ら望んでがちがちに管理されている。そう気づいて、ニコルソンが愕然とする展開が鮮烈。人間らしさを求めて、映らないテレビに向かい熱狂するシーンは何度見ても切ない。 【coco2】さん 10点(2003-09-23 12:49:12) |
33.最初は大学生のとき見ました。はじめてみたときは、かなりショックを受けました。見ていると、マクマーフィや精神病患者たちこそが、常人にみえ、看護婦や医者たちが狂人に見えてきました。見えない格子の中で、自由ということの意味さえもわからずにあがく今の時代の人にこそ、見てほしい映画です。 それにしても、ジャックニコルソンって、シャイニングもそうだけど、完全にイタコですね。もう、最高! 【ジョシア】さん 10点(2003-07-13 20:40:58) |
32.誰がこのラストを予想出来ただろう。見ているうちにどんどんマクマーフィに引き付けられていく!この映画はぜったい観るべき。 【ISOVEL】さん 10点(2003-06-08 23:57:19) |
31.チーフはあれだけの感情の爆発があってこそ、はじめて水道の石を持ち上げ、窓に叩きつけることができたのだろう。主人公と出会う前のチーフなら、アイデアこそ浮かべども、到底石は動かなかったのではないか。彼の止まっていた時間が再び動き始めた瞬間に、拍手を送りたい。 【シャブ台】さん 10点(2003-06-02 10:26:59) |
30. 【BAMBI】さん 10点(2003-05-12 17:14:10) |
29.ラストが衝撃的。ジャック・ニコルソンはもちろんのこと、冷酷な婦長を演じたルイーズ・フレッチャーも素晴らしかったと思います。 【こまち】さん 10点(2003-04-28 10:08:07) |