《改行表示》 9.《ネタバレ》 作品のテーマ、制作時期、その他のゴタゴタによって、『博士の異常な愛情』と比べられがちですが、刻一刻と迫り来るタイムリミットに向かってそれぞれがそれぞれの立場で足掻き続ける姿を克明に描いている辺りからの連想でいくと、「日本のいちばん長い日」なんかも思い出したりします(勿論、リメイク版ではない方)。 誤ってソ連への水爆投下命令を受け取った米軍爆撃機がモスクワへと向かい、米大統領ですらそれを止められない事態に。このままではソ連の報復により米ソが互いに全面核攻撃に踏み切り、いよいよ人類最終戦争が勃発するのか。 「いやいや、ソ連が報復すれば自らの破滅を招くだけだから、報復は不可能、よって何も問題なし」という謎のパラドクス。信じる気があればどんなことでも信じられるかもしれないけれど、問題は、何も信じられない、ということ。 映画は密室劇の様相を呈し、わずかな情報源といえば、壁のパネルに簡略表示される米軍機の様子と、モスクワと繋がったホットライン。 こちらが混乱しているように、電話の向こうでも混乱しているのだろうけれど、その様子は映画では直接描かれず、米大統領が感じるもどかしさを、映画を見る我々も共有することになります。 絶望的なまでにそこに横たわる不信感。相手を信じることより、相手に信じさせることの難しさ。我々は、「相手が自分を信じている」ことを、信じることができるだろうか? さらには、アメリカが米軍機を撃墜せねばならない矛盾。ソ連が米軍機を撃墜することをアメリカが支援する矛盾。平和の代償はどんどん大きくなり、ついには。 ラストに出てくる、「こんなコトは実際には起き得ません」風のテロップ、これをここで出さなきゃならないということ自体に、かえって不安を感じてしまったり。 【鱗歌】さん [インターネット(字幕)] 9点(2021-09-11 13:41:26) (良:2票) |
《改行表示》 8.《ネタバレ》 この時代、アメリカ映画界にまだ良心が残っていた時代かなと思わせる内容。 アメリカ大統領にヘンリーフォンダですね。この役は、彼しか出来ないかもしれません。 現実のアメリカ大統領より、人間として信頼される人しかリアリティが出せない役。 映画の中で、教授が先制攻撃をかけるべきとの発言に対し、准将の「先制攻撃する側の方が、生きる価値があると 言うのか」との反論は、現在、安保法案で先制攻撃できる国になろうとしている日本に対するメッセージかもしれない。 モスクワに水爆を発射したパイロットは最後まで人の声を信じず、機械の命令に従った。 そして水爆が爆発したときの高音が、絶望の音として耳に残ります。この映画を作った人々に敬意を払いたい。 【cogito】さん [DVD(字幕)] 9点(2015-08-12 00:33:19) (良:2票) |
7.《ネタバレ》 人間が如何に愚かな生き物なのか?自分の事しか考えていないか?という強烈批判が伺える。一億人の命が危ない。6000万人を救う為には残りの4000万人には悪いが犠牲になってもらうというウォルター・マッソ-の台詞は国の為なら人の命なんて何とも思ってないという不愉快極まりない人物像からは国民の気持ちなんて無視している姿しか浮かばず、腹が立って仕方ない。その一方で国の安全、国民の安全を真剣に考えているヘンリー・フォンダの大統領の苦悩が凄く伝わってくる。敵のミサイル、兵器、戦いに対してどうするか?皆の意見を聞きたいと会議の場に集まる人間に決定は私がするが諸君の助言が欲しいと答えを求める姿は国のトップとしての本来あるべき姿である。国のトップであるならば何よりも国の安全だけでなく国民の全ての人々を守る為にはどうするか考えるべきだというシドニー・ルメット監督のアメリカに対する思いの強さと人間としての本来あるべき良心を感じることができる。こういう映画こそ地球上の全ての人間に見て欲しい。そうすれば戦争なんて如何に馬鹿げているかてことが解るはずだ。 【青観】さん [DVD(字幕)] 9点(2013-08-13 19:31:56) (良:2票) |
6.《ネタバレ》 2時間近く上映時間があるのに、全く音楽を使わずに創られた映画というのは珍しいでしょう。それは徹底していて、ほとんど全編が会話と会議の場面ということもあって、効果音としてすら音楽がないのです。そして水爆の爆発を表現した「キーン」という電話回線が熔ける音は、映画史上に残る効果音です。とにかく緊張感が半端じゃない。ヘンリー・フォンダのアメリカ大統領演技は、鳥肌がたつほど素晴らしかったです。私が今まで観た中で一番怖い映画でした。 【S&S】さん [CS・衛星(字幕)] 9点(2009-03-07 20:18:21) (良:2票) |
《改行表示》 5.《ネタバレ》 この作品がすごいのはたぶん作品の中で 本気で問題提起が行われるからであろう。 兵器とは悲劇しか生まない。 機械や兵器の威力はすでに人間のコントロールの範疇を超えている。 それを人間が持つこと自体が間違ってるのではないか。 抑止力として兵器を持たねば維持できない国どうしの関係、対話。 もう悲劇の結末がすぐそこに見えているかのようだ。 【ゴシックヘッド】さん [DVD(吹替)] 9点(2013-03-12 20:51:46) (良:1票) |
《改行表示》 4.一つ間違えは世界戦争、地球崩壊になりかねないだけの原水爆がボタン1つで乱れ飛ぶ、そういう恐ろしさを後世に伝える映画である。映画は低予算のモノクロ映画でありながら、迫真迫る演技と演出によって、その怖さを見事に描いている。 同年に製作されたキューブリック映画とは違い、正真正銘、正攻法1本のシリアスな映画だ。特に大統領と通訳二人だけ(相手は見えない)のシーンがすばらしい。 この映画は同年に制作されたキューブリック映画とは違い、日本公開が18年も遅れてしまったが、被爆国日本としてはそれほど強烈な影響を与える映画だったからかもしれない。 【ESPERANZA】さん [映画館(字幕)] 9点(2012-05-10 21:32:03) (良:1票) |
《改行表示》 3.《ネタバレ》 白黒でしかも音楽なし。舞台もほとんどが限られた室内という設定ですが、中盤からラストにかけての緊迫感が凄いです。 役者さん達、特に大統領役のヘンリー・フォンダの演技が素晴らしく、どんどんのめり込んでいきました。 ラストシーンは衝撃の一言。自分はまったく逆の結末を予想してたのでショックが強かったです。観終わったあとしばらく放心状態でした。 12人の怒れる男もそうですが、シドニー・ルメットの凄さをまざまざと感じさせられた作品です。 |
2.《ネタバレ》 ○これぞ究極のサスペンス。鳥肌が立った。○徹底した訓練が招く破滅。○ただの電話シーンだがもの凄い緊張感。高音が鳴り響いた瞬間の空気感も凄い。○キャストの好演も光る。ヘンリー・フォンダはやはり名優。○序盤の冗長さがもったいなかった。 【TOSHI】さん [DVD(字幕)] 9点(2009-06-12 13:56:27) (良:1票) |
1.先日リメイク版の未知への飛行を観て、ちょっとがっかり・・・そこで過去のビデオテープを探し出して「シネマ大好き」と言う映画特集で放映された物を探し出しました。やっぱりオリジナルが良いですね! とにかく緊張感が凄いんです。今ではありえない話でしょうが、核兵器を積んだ米軍の爆撃機がソ連のモスクワを間違いで爆撃してしまいます。それを阻止しようと米ソ両軍が爆撃機を撃墜しようとするのだが・・・原題のFailSafeとは地図上の軍事的な境界線でそこを越えると大統領命令でも無視し任務を遂行するのです。今はビデオも廃盤でDVDも無いため視聴は困難です。 【もぐもぐ】さん 9点(2002-09-10 15:37:23) (良:1票) |