8.この映画を観て「気分が悪い」といった類の感想をもつのは当然であって、それこそ監督の狙ったところではないでしょうか。そう思ってしまった時点で、監督からすれば10点満点の観客だと思うのですがどうでしょう。
なので、その「気分が悪い」の理由を考えず、ただ単に「気分が悪いのはダメなもの」と解釈して放り出して0点をつけてしまうのは、思考停止に過ぎないし、あまりにもったいない気がします。娯楽性のみを求めてこの作品を観たのならばなおさらもったいない。まぁそういった意味でも、この映画を前にしてしまっては、0から10の11段階の点数をつけるなんていうのはあまり意味を持たない気もします。あの「第九」へのイメージを180度変えさせられてしまった時点で見事に術中にハマってるんですからね。
「おもしろい」というのはなにも、腹をかかえてゲラゲラ笑うことだけを意味するのではなく、こういう衝撃も「おもしろい」という感情の部類に入るのだな、と実感させてくれる映画でした。この衝撃をうまく言葉に変換する能力がないのが残念です。知恵熱でそう。というわけで、9点です。マイナス1点は、観せたい人を選んでしまうから、という理由です。作品としては10点。もっと多くの映画や本を消化して成長してから、またこの狂気に触れたいと思います。
【追記】余談ですが、主人公が他人を殴ろうとすると吐き気をもよおすシーンを観て、力石徹戦後の矢吹丈を思い出しました。おっつぁん・・・テンプルに打ち込めねぇ・・・。 【708】さん [DVD(吹替)] 9点(2005-11-02 04:28:01) (良:2票)(笑:2票) |
7.キューブリックは難しい。この作品の背景も意図もよく分からない。とても素人考えな解釈だけれど、オレンジは有機的で不安定で腐敗しやすいもの、つまりは人間と暴力のメタファーで、時計は無機的で硬質で正確なもの、つまりは規律や規範や管理や束縛のそれなのだろうか、と思った。時計を仕掛けられたオレンジ。その無理なコントロールはいつしか両者に破綻をもたらす。時計はオレンジの酸で侵食され、オレンジは静かに腐って行く。そう見受けた。この作品には、その「オレンジ」にも「時計」にも凶悪で不愉快なほどの暴力を感じる。キューブリックの確信犯的な企み、高尚で硬質で無機的な「キューブリックの暴力」。計算された暴力、キューブリックの私室の中の整頓された暴力。その部屋の椅子に座り、1人ほくそ笑んでこっちを見ている彼の姿が浮かぶようだ。とことん観客を高みから見下ろす監督だと思う。あと、全くの蛇足だけれど、ある友人が、私が下睫毛にもマスカラをバリバリに塗っているのを見る度にこの作品を思い出すらしい。確かにあのアレックスの目元は印象的。 【ひのと】さん 9点(2004-01-24 15:01:39) (良:4票) |
6.「個人の自由」vs「社会による管理」という図式は、M・フーコーの「パノプティコン」やチャップリンの『モダンタイムス』、オーウェルの『1984』などを列挙するまでもなく、それこそ腐るほど繰り返し論じられてきたこと。もっとさかのぼれば、厳格な戒律が形式化したユダヤ教に対して内面の「愛」を主張したキリスト教や、あるいは、行動規範の形骸化したカトリックに対して信仰を機軸としてこれを批判したプロテスタントのごとく――果たして個人が人間たりうるのは、外部からの規範によるものなのか、はたまた内面の自律なのか、という有史以来の大問題に直結します。犯罪をテーマに考えても、本作で描かれている通り両極に収斂します。すなわち、外部からの「治療」を施してまでも犯罪を根絶すべきという立場と、犯罪を犯すことは個人の自由の範疇であり個々の良心の問題であるという立場と(ちなみに、精神障害者に対する「ロボトミー」は前者の変奏でしょう)。いうまでもなく、近代立憲主義の立場からは、公権力による強制は外面的行為にのみ限定されるべきであり(令状に基づく身体拘束や、刑の執行など)、内面への介入は断じて許されてはならない、という結論に達します。犯罪を取り締まる(=外部的行為への規制)ことはOKだけれども、内面にまで踏み込んで権力の指向する方向へ心を操作することは厳禁だと(矯正刑は最低限度にとどめる)。人間性は、善と悪の間を揺れ動くもの。善は悪の裏返しであり、悪がなければ善もありえない。根っからの悪人などいないし、完全無欠の善人も存在しない。醜い悪を憎悪するからこそ、崇高な善を希求する。しかし、その一方で、あからさまな善に唾しながら、悪の背徳に魅せられる――人間というものの複雑さを改めて考えさせられます。もっとも、成人後の私自身は、万引き程度の悪すらできない小心者ですけど。(笑) 【アイアン・バタフライ】さん 9点(2004-03-07 10:22:36) (良:1票)(笑:1票) |
5.完璧でしょう! キューブリックの中でも最高の作品。
ストーリーも映像もなにもかも素晴らしい。 「好き嫌いはともかく」一度は体験すべき映画だと思います。 【非映画人】さん [DVD(字幕)] 9点(2007-11-06 00:15:11) (良:1票) |
4.自分にとってはバイブルのような作品です。暴力を悲劇的イメージで描くと、美化や肯定に繋がります。逆に暴力を好意的に描くことによって、不快感や嫌悪感を与えることも狙いの一つではないでしょうか。キューブリック監督に聞いたら、否定されると思いますけど。 【金子淳】さん [DVD(字幕)] 9点(2004-07-11 16:50:03) (良:1票) |
3.初っ端からのあの異様な雰囲気は、現実からの孤立した雰囲気というか、別世界。女性の乳房をあしらったPOPなオブジェや、あの白い作業着(?)にシルクハット&ステッキの奇妙なスタイル、一見そのイメージとミスマッチに思えるクラシックなサウンド…etc、全てに斬新な試みが備わっていて全てに統一感が存在する、これが30年も前の映画なのかと驚いたと同時にそれこそ衝撃。ヴィジュアルがないとこの映画ってきっと成り立たない。もちろん、バイオレンス&レイプシーンも衝撃的だったが、見慣れているといえば見慣れている(?)が、私がこんなにもヴィジュアルから入った映画はおそらく初めて。 |
2.自分の嫌いなジャンルはバイオレンスであって、幸せ家族や、女、子供、そして老人と、全くの他人に危害を加え、自分さえよけりゃそれでいいのかって感覚で見せつけられる暴力シーン。これが大嫌ッいな訳でして。これって、冒頭いきなり3連チャンをやらかしてくれましたよね。 なので、通常ならば、当然そこで怒りに変わってアウトなのですが、なんやこの惹きつけられる魅力って・・・(音楽だ!そして、マルコムだ!)・・・・・→そして最後にこの作品はどうだったのかと・・・・・・・ ※最高でした。どこが?ってのは説明できません。マルコムの演技の素晴らしさにに惹かれたってのもひとつはありますが、なぜ?って説明は要らぬでしょう。。なんか凄い映画を見てしまったって気分です。後引きます。上手くまとめきれません。 そして最後にひとつ思う事、これって見るひとによっては、0点か10点ではないんですか? って自分は中途半端に9点なんですが ^^; 【3737】さん [ビデオ(字幕)] 9点(2004-01-13 14:20:42) (良:1票) |
1.美しい映画だと思います。「黒」と言う色のイメージ、しかも、砂利混じりの薄汚いどす黒さではなく、美しく染め上げられた高貴な「黒」が目の前に浮かびました。丹精に、繊細に、そして、瀟洒に作り上げられた「悪」は、これほどまでに麗しく、蠱惑的な香りを放つものなのでしょう。また、狂気の象徴としてルードヴィッヒの楽曲を選んでいることも、何とも言えないほどエロティックな感じを、映画に与えていると思いました。 【HIDEKI】さん 9点(2003-04-06 21:06:30) (良:1票) |