6.《ネタバレ》 男女の関係を通じた戦後時代の距離感が面白い。映画の多くは二人の会話である。会話を重ねお互いの距離は近づいていくが名は知らない。形式ばったことを軽視することで、奥深い情感が滲み出てくる。 詩的で軽妙な会話を見ていると、読みやすい本を読んでいるようで心地良くなるし、フランス女性の感情を想像したくなってくる。 彼女は酒などでは癒し得ない傷があり、それが原因となって日本男性への気持ちに葛藤している。しつこいくらいの葛藤が、戦時の平時とは違う異常性を強く考えさせられる。戦争について精神的な後遺症をこの時代にピックアップした点は驚きだ。
二十四時間の情事の後、彼らはどうなったのだろうか考えさせられる。最後に互いに名前を知らないことが強調されるから、教え合うことで情事は終わるのかな。何となくそう考えたくなったから、反戦映画としての意義も十分あるのかもしれません。 【さわき】さん [CS・衛星(字幕)] 7点(2018-01-29 16:25:35) |
5.ヒロシマモナムールというタイトルに惹かれて鑑賞。 序盤の被爆直後のシーンにおいては、これ記録映像なのかなと思えるほど目を背けたくなるほどリアルでツライものでありましたが、そのツライ映像というか画像は初めだけ。 話はすぐに行きずりの女と男の二十四時間の情事、そして女のツラい過去が一方的に明かされ、その女と一夜限りで別れたくない男が最後まで絡んでゆくというドラマに変身。 最後こそ、女がヒロシマの街を彷徨い、タイトル相応の行動を起こしてはくれましたが、これ、 実のところはヒロシマ・モナムールではなく タイトル、ヌーブル・モナムールのほうが正解なんじゃないかなとか思えて終焉。 反戦映画に対して そんな思いを持ってしまった事が間違った見方なのか 別に間違ってはいないのか 答えは出て来ませんが、 実際のところは『ヒロシマ、わが愛』というよりも 『ヌーブル、わが愛』 そう強く感じてしまった。それが素直な感想とさせていただきます。
以下は、直リンするかどうかで大いに悩みましたが、直リンさせてもらう事にしました。 私はネット上で拾ったこの方の解説と解釈と思いにすごく救われました。 気になられた方は是非とも目にしてみてください。 以下はその方の(たぶん個人)ブログです。 ↓ http://tetsu-eiga.at.webry.info/201408/article_23.html
(アラン・レネとマルグリット・デュラスは「ヒロシマ」をどう捉えたのか)
PS.私はこの方とこの方のブログに敬意を称します。 (プロフィールから察するに、現在70歳~80歳近くになられている方のご様子です) 【3737】さん [CS・衛星(字幕)] 7点(2017-08-13 11:05:03) |
4.《ネタバレ》 冒頭、砂なのか灰なのかも分からないようなものにまみれながら抱き合うワンカットから、情事に耽るシーンに重ね合わさるところで、早くも特異な雰囲気に包まれます。 出会いのいきさつには触れられてませんが、男の方は被爆によって家族を亡くしていて、また、女の方も戦争によって心に深い傷を負っているようで、お互いに何か通じるものがあったという感じでしょうか。 けど、それはただ単に傷を舐め合うだけで、双方どちらにとってもいいことなんかないんじゃないか。理屈ではそう思うけど、やっぱり離れられないわけで、もし仮に離れられたとしてフランスに帰ったなら、何年後かには忘れてしまうのではないかという不安や恐怖があったのかもしれません。 忘れれば、しばらくの間は楽になれるのかもしれませんが、忘れること自体が凄く罪な事。記憶に残し、咀嚼し、ケリをつけることは大きな痛みを伴うけども、逃げてはいけないのだと言っているような気がしました。 もし、彼女があのまま本当に日本に残るとしたらどうなるんだろう。 偶然出会ってしまった二人、そして、原爆を投下したアメリカと計り知れない悲しみを負わされたヒロシマ。 皆、過去に折り合いをつけて生きていかなければならない、そういう映画だと思いました。 【もっつぁれら】さん [映画館(字幕)] 7点(2010-01-04 04:48:51) |
3.普遍的な映像美をもった作品です。冒頭の男女が肌を重ねるシーンもきれいですし、上半身の肌の重なり合いだけ(下着が描写されない)なので古くささを感じさせません。背景は50年前の日本なので実際古いのですが、白黒作品であるということと、男女の顔のクローズアップが多いのでこれも時代を感じさせない要因になっています。また、フランス女性は顔の作りが日本人に近いので、岡田英二さんと共演しても大きな違和感はありません。ただ、フランス人女性側のそれまでの人生は描かれていますが、日本人男性側の人生がまったく描かれてないのがちょっと不満です。日仏合作とはいえ、フランス人脚本監督のあくまでフランス映画ですから、大戦でドイツに蹂躙されてそこから解放されて10年ちょっとのフランス人の気持ちになって鑑賞するといいのかもしれませんね。岡田英二さんは行きずりの日本人男性という設定で良かったのかな。ちょっと、モンティ&ジェニファー・ジョーンズの終着駅を思い浮かべてしまいました。8点つけようとしたんですが、ラストがやや唐突な気がしたので一点減点。でも、メディアが変わっても消滅しないで引き継いで欲しい作品です。 【ひよりん】さん [DVD(字幕)] 7点(2008-02-10 09:45:37) (良:1票) |
2.《ネタバレ》 他の方も書いてますが、私もヒロシマ・モナムールと聞くとどうしてもアルカトラス(グラハム・ボネットとイングヴェイ・マルムスティーンが居たバンド)の名曲を思い浮かべてしまうんですが、この映画も非常に美しく切ない作品でした。 広島の街を舞台にしたフランス映画ということで、変な日本の描写があるのではと心配でしたが和と洋が見事に融和していて全く問題ありませんでした。やはり、フランスの繊細な美的感覚は日本にも合うということでしょうね。(喫茶どーむには行ってみたいですね。もう無いでしょうけど・・・・・) 広島の原爆被害とそこからの再生の話だけではなく、フランス人女性の戦争によってつけられた大きな心の傷についての話でもあって、その広島出身の男とフランスのとある町(ヌベール)出身の女の束の間の出会いを描くことによって、戦争という悲劇とそこからの再生を物語っているように感じました。 【TM】さん [CS・衛星(字幕)] 7点(2007-08-10 11:37:13) |
1.《ネタバレ》 「ヒロシマ・モナムール」といえば「アルカトラス」の名曲を思い出してしまう世代なのですが(誰も知らんて?)本家本元はもちろんこの映画。反戦ものとしても恋愛ものとしても異色で、ストーリーらしいストーリーがなく、かといってレネお得意のドキュメンタリーでもなく、全編が「詩」のような映画。それは男女の繰り返される言葉がそう感じさせるのかもしれない。被爆地ヒロシマが戦後復興の中で人々の記憶から薄れゆこうとしている。平和公園や原爆ドームや記録映像や博物館が戦争の悲劇を語り継ぐために存在するが当事者の苦悩の大きさは伝えきれない。その中でけして消えない戦争の傷を背負った男女が苦悩する。風化させてはいけないが風化してゆく戦争の傷と忘れなければ前に進めないのに忘れることができない当事者それぞれに残る戦争の傷を同時に描くことでひとりの人間に多大なる影響を及ぼす戦争への批判を色濃くしてゆく。女にとってヒロシマは故郷ヌベール。ヌベールは彼女にとっての戦争の傷そのもの。二人の情事は終わらなければいけない。そして忘れなければいけない。そしてやっと前を向けられる。ヒロシマのように再生する。 【R&A】さん [ビデオ(字幕)] 7点(2006-09-26 14:51:11) (良:1票) |