11.これはまたただならぬ映画ですね。 一切の妥協を排してひたすら一人の女の人間性を問い詰めて行く。この執念深さには脱帽としか言いようがない。 日本映画なのにどこか北欧の映画を見ているような、妙に普遍的な感覚を覚える。 ことに人生の重圧に耐えてなお気丈に立ち向かうお春(田中絹代)が、居並ぶ羅漢像の前で過去を振り返り 感極まって気絶する前の、あの突き詰めた表情は、どこか崇高さすら帯びている。 また、夜鷹に落ちぶれたお春が、客の求めに応じて、化け猫のふりをしてお金をもらうところなど実に秀逸。 まさにこれは溝口健二にしか撮れない傑作。 【kinks】さん [映画館(邦画)] 10点(2015-11-28 03:10:58) |
10.田中絹代の演技には脱帽ですね。その自然さがすごいね。女に降りかかる不条理をぼつぼつと画く。そのシナリオに説得力はないものの、田中絹代が演じるだけで、そこに意味が出てくる・・・すごさ。映画の途中に「千と千尋」の顔なしが金(偽金)をばら撒くシーンに似たものがあったのもおもしろかった。一般の人に勧められる映画ではなく、よく分った人にのみ、面白みが理解できる映画。 【cogito】さん [DVD(邦画)] 7点(2015-06-01 20:29:40) |
9.戦後の映画なのにずいぶん古臭さを感じるし映像も暗い。そこに描かれている女性像はなお暗い。溝口映画なのに好きになれない作品だ。それに田中絹代の年齢に合わない娘役というのもぞっとする。 【ESPERANZA】さん [DVD(邦画)] 5点(2013-11-03 22:52:43) |
8.一人の女の流転の人生を描いたドラマ。 上映時間が長いこともあり、辛辣なストーリー展開はともすれば途中でギブアップしそうになるが、七変化とばかりに様々な顔を見せてくれる田中絹代の好演が光る。 相変わらず演技はうまいし、安心して観ていられる。 男と運命に振り回され続けた彼女に、果たして安住の地はあるのか? この監督さんも成瀬監督同様、女性をテーマにした作品には安定感がある。 映像はやや暗め。 【MAHITO】さん [DVD(邦画)] 5点(2012-10-07 11:14:08) |
7.よく主人公の演技は絶賛されますし、たしかに凄いのですが、若い頃のお春は明らかに声が老けていて無理があると正直思いませんか?。田中絹代の容姿が好きでもないし、前半では「萌え」?というものを感じません(後半妙にカワイイ)。白黒で引きのショットが多いから成立した映画ではないか?とすら思います。しかし、本作を最後まで観ればそんなことはやっぱり些細なこととしか思えません。まあ、とにかく美しいです。/ この作品の世界では女性は人間扱いされません。受動的に生きることを強制され、まさに子供を生む機械として、あるいは男性の性欲処理の道具として利用されます。自由な恋愛は罪であり、女性が異性を求めることは「好色」とされます。そして男はというと・・・ひたすら醜い。なにやらフェミニズム批評っぽくなってきましたが、本作が表現するのはフェミニズムとは何か違う気がします。(むしろフェミニズム的には批判されたりして?)。本作は叙情的な女性の悲劇ではなく、背後にあるのは憐憫の視線とも単純な社会に対する怒りとも少し違います。人間らしく生きるとは?。幸せな人生とは?。そう問いかけながら、監督は真摯で冷徹な現代からの視点で主人公の人生を描きます。ミゾグチは、かくもこの世は生きにくいのか・・・と観客を打ちのめし、それでも生きていく主人公の存在そのものを希望として我々に示しているのではないでしょうか?。あの映像美は、それでも(だからこそ)この世界は美しい、という肯定に見えます。 【しったか偽善者】さん [ビデオ(邦画)] 9点(2009-03-09 01:37:34) |
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6.年代記として多数のエピソードが繰り返されるわけですが、そのせいかどうも作品全体にまとまりを欠いたような印象です。 【にじばぶ】さん [映画館(邦画)] 5点(2007-09-13 10:54:46) |
5.田中絹代扮するお春がお経を読む声に引かれて羅漢堂へとそっと近づいていくオープニングから始まってラストシーンまで、溝口健二監督ならではの移動によるカメラワーク、息の長いロングショット、どれもがこれまた力強さを感じます。溝口健二監督独特のロングショットによって生み出される田中絹代の才気、溝口健二監督と田中絹代の名コンビによって印象に残るシーンの連続です。女のドロドロした部分を溝口健二監督は上手く描いています。この監督の描く女性像は本当に強い女の象徴のように思える何かがあります。上手く言えないんたけど、これもまた溝口健二監督らしい画面構成によって撮られた代表作の一つだと思いました。 【青観】さん [ビデオ(邦画)] 8点(2006-09-05 22:00:45) |
4.カメラが「もっと田中絹代を!」と求めているみたい。それは欲情に近いかもしれない。仏像を眺める田中絹代の頭にかかる布がスウッと落ちるところや、竹やぶの中での壮絶な自殺未遂のシーンのような圧倒的な映像を見せる部分はもとより、堕ちるところまで堕ちて遂には化け猫扱いまでされてしまうところでも、あるいはラスト、屋敷の中で成長した息子に一目会いたいがために男たちの間を軽快なフットワークですり抜ける、そんなシーンでもカメラは田中絹代を決して離さない。田中絹代が役柄を超えて内面の魂を表に出す瞬間、そしてその瞬間をずっと持続させるかのような溝口の長回し。凄い。雨月や山椒大夫には無かったユーモラスな雰囲気の前半がまた良い。嫁選びの長回しシーンなんて、自分の撮影スタイルをもネタにしているみたいで二重に笑える。戦後の低迷期から上昇するきっかけとなったといわれるこの作品を是非。 【Qfwfq】さん [映画館(字幕)] 10点(2005-12-02 00:48:45) |
3.溝口健二の女の描き方、すごいですな。田中絹代という一流の中の一流女優が素晴らしい演技で魅せている。堕ちゆく女の一生が悲しくも、はかなくも、美しささえ漂わせながら描かれている。入念に作りこまれた妥協を許さない秀作であろう。 【たましろ】さん 9点(2004-02-10 23:57:21) |
2.田中絹代が美しい。三船ふんする若侍との恋に破れてからの波乱の人生が、流されるままで歯がゆい。強欲な両親、大名の側室になったのに子供ができたらお払い箱という哀れさ。武家のお嬢様がゴザを抱えての売春婦に落ちぶれ、人間としてもすさんでいく様をしみじみ悲しく演じている。彼女、確かに運動神経が良さそうです。 【キリコ】さん 8点(2003-04-04 23:52:02) |
1.初めてみた溝口健二作品。奥が深いのはわかるが、僕にはどうもイマイチ。何でも映画音楽に初めて日本音楽を使った作品だそうで。琴がよかったね。 【あろえりーな】さん 5点(2002-04-26 22:12:41) |