4.《ネタバレ》 黒澤映画の中でも特に評価の高い本作。
個人的には、黒澤監督は苦手監督なだけに、自分の苦手イメージを払拭できるのでは、と期待して観たのだが・・・
うーん、、これはひどい。
安っぽい黒澤流ヒューマニズム全開だ。
特に、志村喬が死んだ後に延々と続く回想シーンには、ほんとかったるくなった。
中村伸郎が悪役、それに対抗する善人役。
これがハッキリ分かれすぎ。
アメリカ映画の悪いところを、黒澤監督がそのままひっぱってきた感じ。
それと、志村喬の人生観に全く共感がもてない。
人間はいつ癌を宣告されるか分からないし、いつ車にはねられて死ぬとも限らない。
だからこそ、今を必死に生きるのだ。
癌を宣告されてからあれこれ考えたって始まらない。
そんなことは元気な間に分かっておくべきことであり、癌を宣告されてからどうのこうのと気張るのは、人生を守りで固めた人間がすることだ。
明日死んだとしても、後悔しないために人は日々、全力で生きるべきであり、一日一日を必死に生きるべきだ。
そしてそのためには非難されるようなことをすべき時もあるやもしれない。
役所のような封建的な場所で飯を食っているのなら、役所の古いしきたりに意識的に染まっていき、それを死ぬまで意識的に貫き通すべきである。
それは、後悔なく生きていく上での生活的基盤を築くためにやむをえないことだ。
志村喬はもっと早くにそれに気付くべきだった。
そして、それに気付けなかったのは、志村喬がどこかで人生に対し、怠慢だったからである。
そのような人間が、癌という病に侵され、ジタバタと頑張ったとしても、私は何も共感できない。
黒澤監督とは、やはり相性がとても悪いようだ。
本作は、間違いなく力作であるが、そのかもし出す分かりやす過ぎるヒューマニズムに嫌気さえ感じてしまった。