1.《ネタバレ》 保母さんと未就学児童の視点から戦争を描いた映画ね。
戦時下、日本への空襲が熾烈になる中、まだ学校へ行っていない子供たちを東京から埼玉へ疎開させた人びと(シリアスな『翔んで埼玉』とか言っちゃダメ)の物語で、実話が元になってるのね。
メインになっているのは人にも自分にも常に厳しい姿勢の戸田恵梨香と、未熟で子供と同次元で生きてるような大原櫻子。
そして子供たちの面倒を見る保母さんたち、子供を預ける親たち。
それぞれの、子供を大切にしようとする姿勢と、それを妨げるように起こる様々な問題がドラマを生むのね。
映画は前半が大原櫻子、後半は戸田惠梨香が主役のような感じで、背景にある戦況の推移に伴って厳しさを増してゆく中で見応えのある演技で魅せてくれるの。大原櫻子の可愛らしい存在感が辛さの中の輝きって感じで魅力いっぱいね。
田中直樹の独特なテンポの中で生きてるカンジの存在感も良かったわ。彼の生死も含めて、結構多くのエピソードが投げっぱなしになった感もあるけど。
この映画、終戦後からいっぱい作られてきたタイプの、ありがちな感じのやつ。戦争があって、日本では多くの犠牲が出て悲しい悲しい、って。そういう意味ではちっとも進歩してないわ。平成も終わりだっていうのに思いっきり昭和よ。
だけど今またこういう映画が必要になっているような情勢になってしまって。いつのまにか、戦争はダメ!って当たり前のことを声高に叫ばなくちゃいけない世界になっていて。
国と国、民族と民族、宗教と宗教、人と人とを隔てて対立するのが当たり前になってしまった世界で、こういう映画が否定され、封じられていかないように、取り違えられた「表現の自由」が大きな声でがなり立てて、本来の「表現の自由」を封殺してしまわないように、気をつけなければいけないわ。