1.「IWGP」で池袋を、「木更津キャッツアイ」で木更津を、「タイガー&ドラゴン」で浅草を、それぞれの街の独自色をマニアックに抽出し、コメディドラマに昇華してきたクドカンが新たな題材として選んだのは、満を持しての「京都」。
主演に阿部サダヲを抜擢し、舞妓好きの常軌を逸したサラリーマンを,破天荒に描き出した様は、まさにクドカンワールドと言える。
ヒロインに柴咲コウ、ライバル役に堤真一と、配役的にも豪華な面々を揃え、花街の華やかさに彩りを添えている。
コメディ映画として笑いどころは全編通して繰り広げられており、ラストには心地よい爽快さも垣間見せるが、どうにも手放しで楽しめない雰囲気が残る。
それは、これまでの宮藤官九郎脚本によるコメディ映画においてもそれぞれ感じてきたことなのだが、映画の長尺になると、彼のコメディ作品は間延びしてしまう感がある。
「GO」「ピンポン」「69」などドラマ性の高い映画作品の脚本では、持ち前のコメディセンスと作品のドラマ性がバランスよく合致して、それぞれ優れた脚本力を見せつけてくれる。
しかし、「木更津キャッツアイ」の映画版や今作などコメディのウエイトが高い映画作品の脚本では、どこかテレビ的というか、深夜枠の範疇を越えられない感が残ってしまう。
もちろん、その独特のマニアック感がクドカンの脚本の面白味ではあるのだけれど、その面白味が映画作品の尺でも発揮された作品が生まれることが、今後の「期待」かもしれない。