5.最近の邦画は、「美しくないもの」は描きません。血はもちろん汗も流さないし、息が切れることも稀です。子供だってゲロ吐きません。人間だけでなく自然を描くときだって、イモムシやらヤモリやら死んだ小動物の骨なんてのは描かない。
この映画はそういう実写ですら撮らないような生々しさや生活感を徹底的に描いています。それだけでも好感が持てる作品でした。これでもまだ「キレイ」に描いてるほうだとは思いますけど、十分力作ですね。
どうして実写映画でこういうアプローチをする作品が少ないのだろう。ただ畑を映しても美しいとは思いにくいからかなあ?
劇的な事件といえば、父親が死んでしまう、ということくらい。「おおかみこども」という特殊な設定ですが、描かれているのは基本、人間誰でも経験するような生活の一場面。それでもこんなに豊かな映画になるんですね。逆に、自分の実生活が本当に豊かと言えるだろうか・・・とちょっと考えちゃいました。ただ大雨が降るというだけで、なんだか感動してしまいます。一昔前の角川映画の雰囲気が見事に漂っていて、懐かしい感じもする映画でした。