57.十数年に渡って、この映画のジャケットをレンタルショップで幾度となく見続けてきた。
そしてその度に、「若いビル・マーレイが出ているチープなラブコメなんだろうな」と思い続けてきた。
何より、「恋はデジャ・ブ」という邦題がださ過ぎる。恐らく、多くの映画好きの日本人が同じような印象を持っているんじゃないかと思う。
ところがこの映画が、アメリカの歴代映画ランキングの「ファンタジー」部門で8位にランキングされており、驚いてしまった。
そして追い打ちをかけるように、TSUTAYAの“発掘良品”の企画棚に並んでいるのを観て、この映画の存在を知って十数年目、初めて手に取った。
いやあ、良い映画だった。まさに“8位”、まさに“発掘良品”に違わない。
自尊心ばかりが強い意地の悪い主人公が、嫌々訪れた田舎町で、“或る一日”を抜け出せず、繰り返し繰り返し同じ一日を生きなければならなくなる。
良いことも悪いこともすべてが繰り返され、主人公は時に楽観し、時に悲観し、心情の浮き沈みさえも繰り返す。
人は誰しも、とても良いことがあっても、とても悪いことがあっても、「また同じ一日をやり直したい」と思う。
では、実際にそういう状況に陥ったとき、果たして何が出来るのか?ということをこの映画はひたすらに描き出す。
永遠に繰り返される一日。それはやはり“悲劇”であり、“恐怖”だと思う。
何を成功しても、何を失敗しても、目が覚めると”ゼロ”に逆戻り。
その儚さは、「一日」に“始まり”と“終わり”があることの「価値」を雄弁に語る。
ラブコメであるこの映画は、恋の成就とともに一応ハッピーエンドを迎える。
ただそのハッピーエンドには、また繰り返される一日が表裏一体で存在しているようで、何だか怖い。
ビル・マーレイが演じる主人公は、繰り返される一日に苦悩しながら、人生における様々な発見と経験を得ていく。
この映画は、“同じ一日”を繰り返して描くことで、人生にまったく“同じ一日”なんてものは無いということを、ファンタジックな辛辣さの中で物語っている。
最後に……やはりこの邦題だけは最悪だ。