7.いつになくハイテンションな役づくりでキャラクターに挑んでいるらしい石原さとみが、「こんなの初めてーーーー!!」と絶叫する予告編を観て初めてこの作品に対しての食指が動いた。
脇役を演じる女優の台詞一つが気になって、映画館まで足を運んだことは記憶に無い。まあこういう“きっかけ”もあって良いと思う。
原作は“ほぼ”未読。話題の漫画として売れ始めていた頃に、一度第一巻を手に取ったが、絵柄の趣味と展開の稚拙さがあまりにも合わなくてすぐに読み進めるのを止めてしまった。
不気味な巨人の群れが人間を襲う描写とストーリーテリングは、斬新な表現だとは思ったが、そんなに騒ぎ立てる程のものとは思えなかった。
以来、益々拡大していったブームをスルーしたまま、今作の鑑賞に至った。
原作のストーリー展開を知らない分、対比による不満を避けられたことは、ある意味幸運だったと思う。
日本特有の“特撮映画”として楽しめる要素は充分にあったと思う。
特にこの“前編”のクライマックスである“ある展開”は、原作を読んでいなかったからこそ素直に楽しめた。
原作の持つ雰囲気とはテイストが大いに異なってはいたが、特撮で映し出された巨人は、善し悪しは別にして禍々しさは際立っており、それなりの恐怖感を醸し出せてはいた。
そもそも“特撮映画”を観るつもりで映画館に足を運んだ者として、最低限の満足感を得られたことは間違いない。
ただし、やはりその他の大部分においては、とてもじゃないが一つの映画作品として褒められたものではない要素が多すぎた。
冒頭のシーンを筆頭にドラマパートは総じて、演出面、演技面両面において稚拙過ぎる。
どんなにスペクタクルシーンで力を入れようとも、人物描写がこれ程までにお粗末では、結局白けてしまう。
今作は“前編”とはいえ、ストーリー展開的にも腑に落ちない点は多く、一々突っ込むことすら馬鹿らしくなることも否めない。
どう転んだとしても結局「批判」は避けられなかった難しい企画であることは間違いなく、それでも日本映画としてこの映画化に挑戦した意義と価値は確実にあったことは認める。
少なからず「後篇を観たい」という気持ちを持たせただけでも、良しとすべきだろう。
「後篇」にも期待はしたい。
でも、おそらくそれを観た後には、「やっぱり、大人しくギレルモ・デル・トロ監督あたりに権利を譲渡すりゃあよかったのに」とか思ってしまうのだろうな……。