1.《ネタバレ》 吹奏楽と野球と、欲張ってしまった感もあるし、エピソードの脈絡として腑に落ちない流れもある。幼稚に過ぎる科白は多々あるし、
協賛や配役絡みであちらの顔を立てこちらの顔を立てというしがらみの露呈もわかる。そんな中での、土屋太鳳の成長のドラマが清々しい。
楽器演奏の練習を丹念に描写して、次第に上達していく様が描かれているということ。
そして、序盤では俯いて足元を見ていた彼女が終盤では上を見上げて、声をあげる様が描かれているという事である。
その為に二人の身長差があり、病院の庭から屋上に向けての吹奏楽演奏があり、竹内涼真が空高く放つ逆転ホームランがある。
努力を続ける彼女を見守る竹内、上野樹里、葉山奨之らのさりげない窃視が心地よく、彼らの視線にスムーズに同化させてくれる。
それらがメンバー発表のカタルシスを生んだ。
失意のグラウンドには雨を降らせ、土屋と志田未来が語り合う開放的な渡り廊下には風が通っている。
不穏なシーンの幕開けとして曇る空や、強風で荒れる窓外の木々が挿入され、失恋した土屋をいたわる屋上の空は青く澄んでいる。
トロフィー陳列ケース前での主演二人の出会いを印象付ける光の処理など、照明も画面の清潔感を増幅して素晴らしい。
スマートフォンの出番をわずか2箇所に留めたのも良し。本来なら無いに越した事はないが。
直接家に出向いて声を届け、自転車で伴走し、音色で心を伝える映画に、携帯などそれこそ不要だろう。