2.《ネタバレ》 校舎の屋上で振り返る広瀬すずの髪が舞う。その舞わせ方とか、スローで捉えた競技カルタのショットとか、目のクロースアップとか、
モーションの造形と編集はアニメーションに近い。決勝戦で、森永悠希目がけてカルタを弾く広瀬のアクションのスローモーションに
漲る高揚感は出崎統演出のそれを思わせたりもする。
ところどころに挟まれるCG処理ショットもそうした印象を補強するのだが、ヒッチコックの『下宿人』的な床の素通しショットまで
登場するに至っては、そこまで実写の制約を取り払ってしまう必要性・必然性があるのかとも思ってしまうけれど。
この競技の(映画的)面白さが主として静から動に一気に切り替わる瞬発性にあるのなら、その瞬間を持続的なショットの中で
アクションの速度の美しさとして提示して欲しいところだが、編集のリズムに頼ってしまっている場面が多いように思う。
と言いつつ、決勝戦での逆転の契機を、肩に触れる仲間たちの手と視線で処理していく流れはこちらの気持ちをよく映画に乗せてくれる。
雨天から晴天への変化を光と音のそれに変換し、映画序盤から地道に演出してきた広瀬の呼吸音をクロースアップさせて印象深い。
五人の個性もバランスよく描写してあり、クライマックスの盛り上げもしっかり出来ている。