2.《ネタバレ》 点数を付けるのが、非常に難しい作品だ。
賞レースに加わっているだけのことはあり、映画の質はそれなりに高いといえる。
俳優の演技、緊迫感溢れる演出を飽きることなく堪能することはできた。
しかし、ストーリーがあまりにも面白みに欠ける。
ソダーバーグが製作に関わっており、彼の監督作品やプロデュース作品と同様の感想を抱く。いったい何を伝えたかったのが分からない。
友情なのか、正義なのか、社会派映画なのか、「フィクサー」の活躍なのか、法廷系サスペンスなのか、大企業による陰謀モノなのか、何に焦点を当てたのだろうか。
楽しめない理由はいくつかある。
まず「トム・ウィルキンソンの精神病」だ。
なぜ精神病という設定にして、異常行動を取らせる必要があるのか。
正義感に溢れ、愛に悩むノーマルな弁護士という設定の方が絶対に面白くなったはずだ。
そして、次は「ジョージ・クルーニーの借金」だ。
ギャンブル狂いで文無しであり、さらに突然借金を抱えて苦しい状況が分かる。
「どうしても数日以内に大金が必要だ」というのは面白い設定だ。
ただ、この面白い設定がまるで活きてこない。「金」を取るのか、それとも「正義」や「友情」を取るのかという葛藤があってこそ、活きてくるものだ。
フィクサーとして揉み消しを依頼されて、事件を解決すれば多額の金を手に入れられるが、友人の本来の目的を知り、どちらの側に付くのかを悩んでこそ面白いものとなる。
「金」に傾くかのように観客をミスリードしておき、最後には・・・というのが定石だろう。
さらに、最後は「ティルダ・スウィントンの弱い悪役ぶり」だ。
精神的な弱さを抱えているにも関わらず、重役に抜擢され、追い込まれているという設定は面白い。企業を守るための彼女の暴走は、精神的な弱さによるものだろう。
ただ、そんな弱い悪役では迫力に欠ける。
表では「フィクサー」を使って合法的な解決を図ろうとしながら、裏では「殺し屋」を使って非合法的な解決を図ろうとする二面性を抱えるような悪役の方が面白いと思う。
精神的な弱さがあるのに強がろうとするからこそ、表と裏の顔が大きく乖離していくものだ。本作では、ただのプレッシャーに弱い女性としか映らず、内面の複雑な想いなどは感じられなかった。
これらを踏まえると、どうしても高い評価はできない。