3.いきなり洗車中のフロントガラスだとか、いきなり漁師の顔のアップだとか、
意表を衝くシーンの繋ぎを用い、
それをそのまま意欲的な長回しに移行させて映画を持続させていく面白さがある。
その上、不意に時制の飛躍も織り交ぜて観客を映画に引き込んでくるので、
長丁場も飽きさせない。
明らかに撮影中のアクシデントと思しき出来事を
そのままアドリブで活かして成立させている長回しショットの数々も、
作り手たちが映画を楽しんでいる事を伝えてくる。
真っさらな白い雪に足跡を刻印しながらはしゃぎ、
静かにキスをする高良健吾と吉高由里子。
そんな二人を見守りながら真上へと上昇していく、
まさに一発勝負のクレーンショットが見事に決まっている。
そうしたロングテイクにこだわり単調な切返しショットを極力制限していることで、
「祥子」「世之介」と楽し気に呼び合う二人の正対した切返しショットが
強さを増して迫ってくる。
その吉高の幸福な表情が、
カーテンにくるまって恥じらう彼女の愛らしさと併せて、素晴らしい。
『南極料理人』の監督らしい食事シーンの数々
(ステーキをバーガー風にしてパクつく吉高、
飄々とスイカにかぶりつく高良、
味気なさそうなカロリーメイトに長崎の豪勢な食卓など、、)
も充実しており楽しい。